2-7-31.授業 魔法学
いつもより比較的真面目なラルフは、黒板に書きながら話し始めた。
「まず、属性について話すぞ。属性の種類は、炎・水・氷・土・重力・風・次元・電・緑・光・闇・回復だ。ま、他にもあるがね。それぞれ、個人が使える属性は、親からの遺伝継承と先天的に発現する属性で決まる。これから例を挙げるぞ。」
カッカッカッとリズム良くチョークで黒板に文字が刻まれる。
「父=火。母=風。この子供が継承として扱える属性が火・風。火のみ。風のみ。この3パターンだ。父=火。母=火の場合、継承するのは火のみだ。ただし、この場合は他の火属性よりも強化された火を操る事が出来る。極属性【火】って感じだ。この星、魔法街でのエリートを目指す家系は、同属性のみで婚姻を繰り返し、極属性として力を付けていく家系が多いな。但し、今の話は簡略化した例だ。基本的に父親も母親も継承属性2つと先天的属性の1つを持ってるから、2人合わせて合計で6つの属性の内2つの属性が継承属性になる。あ、一応誤解が無いように言っとくが、継承属性で父親の属性を2つ継承って事は無いぞ。あくまでも父親から1つ、母親から1つだ。」
ラルフは教室を見回してまだ寝ている生徒がいない事を確認すると、満足そうに頷いて再び話し始めた。
「でだ、以上の遺伝継承に子供が生まれつき持っている先天的属性が加わる。この先天的属性は、何の属性が発現するかは決まっていない。産まれて、その能力が発現するまで分からない訳だな。もちろん、先天的属性も後の子供には遺伝継承するぞ。両親からの継承属性と、子供の先天的属性が全て同じだった場合、とてつもなく強い極属性が誕生するって事だ。例えば、普通の極属性【水】が、極属性【雫】になるんだ。極属性うちのクラスにも何人かいるだろ。」
ラルフはクラスの生徒を見回すが、特に誰も反応をしないので、龍人からは誰が極属性かは分からなかった。そもそも、よくよく考えてみれば自分の属性が良く分からない。
「これらの属性に、付加する形で属性を手に入れる事ができる。その方法を契約と呼んでいる。契約する相手として、龍・獣・鳥・悪魔・天使などが挙げられるぞ。例えば、炎の獣の代表格として知られている炎獣イフリートと契約すると、炎の属性を手に入れるって事だ。極属性【炎】が、イフリートと契約し、その力を行使している間だけ、真極属性【炎】になる。属性【炎】なら、極属性【炎】だな。ま、必ずそうなるわけでもないから、あくまでも一例として捉えておけよ。ま、基本的に自分の属性以外の相手と契約するパターンは非常に稀なんだよな。中々相手が契約に応じてくれない事が多いんだ。だから基本的には同じ属性の相手と契約して、その力を行使する時に上位属性に変化するってのが一般的だ。」
「余談にはなるが、伝説の属性ってのも存在している。それが無属性だ。属性が無いって意味じゃないぞ。無にする属性だ。消滅魔法とも呼ばれているかな。全ての魔法を無効化し、全ての物質を消滅させるとされているが…あくまでも伝説上の属性だ。この属性の所有者は現時点では確認されていない。そもそも、なんで無属性の存在が語り継がれてるのかが俺からしたら謎だけどな。んな反則級の属性がある訳ねぇっての。」
両手を横に広げて肩を竦めるラルフは思いついた様に手をポンっと叩く。
「おっと、そもそも属性ってのはなんなのかを説明してなかったな。んーと、誰かに説明してもらうか。分かる奴いるか?」
すると、教室の中央からゆっくりと手が挙がった。その人物は、先ほど学級委員に立候補したルーチェだ。




