9-3-72.闇と実験
ドレッサーはクネクネしながら指を立てる。
「まずわん、この武器の名前は夢幻よん。んーっ!いい名前過ぎて震えちゃうわん!」
「むげん…ですか。」
しみじみと剣を眺める龍人を見てドレッサーは更にクネる。
「そうよそうよん!まずねぇん、この武器は元々持っている能力は無いのよん。持ち主に合わせて能力が覚醒する様になってるわん。持ち主の能力が上がれば、それに合わせて武器も成長するわよん。まぁー、本当に反則級の武器よねん。無限の可能性と持ち主が手放すと能力が夢や幻の様に消え去る。この2つの意味を重ね合わせて夢幻よん。」
「反則級ってか、そんな武器が存在するんですね(作れるんですね)。」
言外に褒める龍人。
「あなたの要望に応えるにはこれしか思いつかなかったのよ。愛の…愛の力ね!」
喜ぶドレッサー。、
「じゃあ、俺はこれで失礼します。」
ドレッサーの「愛」は聞こえなかったフリをして龍人は退散しようとするが…。
ドレッサーに掴まれてしまう。
「ちょっとん!武器の調整をしなきゃなんだからん。こっちにいらっしゃいよん!」
そのままズルズルと店の奥に引っ張られる龍人。救いを求めて周りを見るが、視線が合った傍から全員が全員知らんぷりを貫いた。
(マジ…?)
この後に自信に降りかかるであろう恐怖を想像した龍人は、硬直したまま奥の個室へ吸い込まれて行った。
数分後、店の中に1人の青年の絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
店の奥からフラフラと出てきた龍人は、後ろで手を振るドレッサーに向けて頭を下げた。
「色々と不本意な所もありましたけど、武器はありがとう御座いました。」
「いいのよん!若いエキスは私の大好物だからん。それにしても気になるのが、能力が何も覚醒しなかった事ねん。そんな筈は無いんだけど。」
「そうっすね…。俺もそこは不安です。」
「まぁ、それでも魔法を付与して使う事は出来るから、そのまま使ってみてもらうしかないわね。その内、覚醒するかもだしぃ。」
女子高生風の口調を混ぜてくる辺りが気持ち悪いのだが、口が裂けても言えない。
「分かりました。取り敢えず、今後はこの武器を使う様にしてみます。」
「はーい!じゃあ…また来てねん!」
ドレッサーは口を前に突き出しながら飛びついて来るが、龍人はギリギリで避ける。
「じゃ、失礼します!」
龍人は爽やかに挨拶を投げかけ、全力で店の外へと走り出した。




