9-3-70.闇と実験
「えっと、藤崎遼です。街立魔法学院の1年生で、ラルフ先生のクラスに所属してます。えーと、…。よろしくお願いします。」
遼が自己紹介をする間、ネネはニコニコしながらも観察をする様な目付きで眺めている。
「御主人様のお連れ様は大分恥ずかしがり屋さんで御座いますね。でも…何かしら惹きつける魅力をお持ちで御座います。」
「お、予想通りだな。よし!ネネ、今回の報酬はこの遼でどうだ?」
「あら御主人様。本人の承諾がないと難しいと思いますが…。」
「んー。遼、レイラの居場所知りたいよな?」
遼は話の流れについて行けず困惑する。
「えっと、どーゆー事ですか?報酬が俺だとかイマイチ理解出来ないんですが。」
「いや、違うぞ遼。レイラが心配なら承諾するんだ。」
真剣な表情で承諾を迫るラルフ。
「いや、だから何を承諾するんですか。」
「いいか。ここでお前が承諾しなかったら状況は何も変わらないぞ?全ては遼、お前に掛かってるんだよ。」
「もう半ば脅迫っぽいんですけど。」
「もう一度言うぞ?お前は仲間を見捨てるんだな?」
「…分かりましたよ。何をするんだか分からないけど承諾します。」
遼が承諾の意を述べた瞬間に、ラルフがいつものニヤリとした表情を浮かべた。
「よしっ。じゃーネネ。そういうことだから教えてもらっていいか?」
呆れた表情で2人のやり取りを眺めていたネネは、ニッコリ笑う。
「いいわよ。予め伝えておくけど、これから伝えるのは確定情報じゃないわ。私の情報網から手に入れた複数の情報から、私が推測をしたのに過ぎない。だから、間違っていたなんていう文句は受け付けないからよろしくね。」
ネネの口調がメイドのものから、情報屋としてのそれに変わる。遼も当然それには気付くが、つっこむ勇気は無く、つっこむ気すらも無かった。
約10分後。
ネネから情報を入手したラルフと遼は店を後にする。
メイド達の黄色い声に手を振ったラルフは遼に声を掛けた。
「遼、さすがに話が突拍子も無いから俺はもう少し調べる。お前は変に頭を突っ込まないで、2~3日大人しくしててくれな。」
「分かりましたけど…。」
「じゃ、そーゆ事だ!またな!」
ラルフは一方的に話を切ると転移してしまったのだった。
1人残された遼は、まだ日が暮れるまで時間があるので、再び特訓に励むため魔法学院へと向かう。
そうして2人が別れた場所にふらっと現れたのは龍人だった。




