9-3-69.闇と実験
「お帰りなさいませ御主人様!」
店に入るなり聞こえてきたのがコレだった。ニヤニヤするラルフと怯える遼の下にメイド姿の女の子がわらわらと集まってくる。
「御主人様、久しぶりですねっ。」
「御主人様、今日は誰の癒しをご希望ですか?」
「御主人様、今日もプニプニしてて最高ですねっ。」
「御主人様、今日こそは私のお願いを聞いてもらいますからね!」
「御主人様、私のご飯を食べに来たんですよね?」
「御主人様、お隣にいるのはどなたですか?」
メイドによる怒涛の攻め(ほぼ全てがラルフ宛)に遼はタジタジだ。
ラルフは慣れたもので、ニヤニヤしながら店の奥を覗く。
「皆わりぃな。今日はネネに会いに来たんだよ。今空いてるかな?」
「えー!?この前もネネだったのに。」
「続けてネネにするなんてねぇ!?」
「つまんないのぉ。」
ラルフがネネという人物を指名した瞬間にメイド達の態度…というかキャラクターが変わったのは気のせいだろうか?
メイドの1人が店の奥から出てくるとラルフにウインクをする。
「ネネちゃんは丁度空いてるわよ。先に部屋に行っててね。」
「おう!わりぃな。遼、行くぞ。」
ラルフは1人で歩き始める。
「え、行くってどの部屋だか分かるんですか?」
「もちろんよ。なんたってこの店は俺の庭だからな。」
ラルフは誇らしげに言うが、遼からしたら誇らしく言う意味が全く分からなかった。
沢山ある部屋の1つで椅子に座りながらまつラルフと遼。
2人の間にはテーブルがあり、飲んでみたらヤケに美味しかった紅茶が湯気を立てている。
コンコン
ドアがノックされた。
「はいよー。」
ラルフの返事に合わせ、ドアの向こう側から声がする。
「御主人様お待たせ致しました。お部屋に入っても宜しいでしょうか?」
「もちろん!かもーん!」
何故かハイテンション?のラルフ。
ドアを開け、中に入ってきたのはピンクのメイドコスチュームに身を包んだ女性だった。
「御主人様お久しぶりでございます。と言っても、1週間ほど前にも起こし頂きましたが。」
メイドはそう言うと口元に手を当ててクスクスと笑う。髪型がツインテールという、一歩間違えればアウトな髪型も彼女がするとヤケに似合っている。そして、ふわっとしたメイド服を着ていてもわかるナイスバディ。こういうのが趣味な男からしたらたまらないのだろう。
「まぁな。今日も会いに来たぜ!」
「あらあら。今日は元気で御座いますね。ところで、お隣の方はどなたですか?」
ネネは遼を見て首を傾げる。
ラルフは何故か答えず、目で遼に答えるように促してくる。
(…?)
ラルフの行動を不審に思いながらも、答えないと失礼にあたると思った遼は椅子から立ち上がると自己紹介を始めた。




