9-3-67.闇と実験
「あの…」
プルルルルル!プルルルルル!
火乃花が話そうとした時に、部屋の中に電話の音が鳴り響いた。
「ん?何か言ったかな?電話が来てしまったから、少し待って下さいね。」
「あ、いえ、大した事じゃないので気にしないで下さい。」
「そうですか。悪いね。電話にでさせてもらうよ。」
ラーバルはデスクまで移動し、電話を取った。
「…そうか、分かった。私が行くまで少し待ってもらえるかな?…あぁ、そうだ。では後ほど。」
ラーバルは電話を置くと申し訳なさそうな顔をする。
「非常に申し訳ないんだが、後送りに出来ない用事が入ってしまった。まだ何かあれば他の者に案内させますが、どうしますか?」
火乃花とルーチェはチラリと顔を見合わせる。
そもそも、今回魔商庁の見学に来た目的は2つ。1つ目は見学後に潜入をすること。もう1つは潜入時に迷わないように、予め館内の構造を把握しておく事だ。
館内構造の把握は魔商庁自体が広すぎるためにある程度しか出来ていないが、何も知らずに潜入するよりはマシであろう。となると、後は潜入をするのみである。
(変に何かを勘ぐられる前に帰るのがいいわね。)
そう判断した火乃花はソファーから立つとお辞儀をする。
「いえ、色々と案内して頂いて本当にありがとうございました。」
「私からも感謝でございますわ。長官が直々に案内をして下さるなんて、普通ではありえないので驚きましたが、嬉しかったですわ。」
ルーチェもニッコリ笑いながら軽くお辞儀をした。
「ははは!喜んでくれたならそれで良いさ。では、レディーのお二方、玄関までお送りしましょう。」
どうやら気分を良くしたらしいラーバルは、髪を掻き上げながら2人をエレベーターに案内する。
エレベーターが降りている間は取り留めのない会話をこなし、正面玄関にてラーバルに再度お礼を告げて立ち去ったのだった。
と、いう風に火乃花の幻魔法で見せかけたルーチェと火乃花は、服装をスーツに変えて魔商庁内への侵入を済ませていた。
これからの目的は1つ。ラーバルが帰るのを追跡し、不審な行動がないか調べる事。その為にも、ラーバルの現在位置を把握するのが先決である。




