9-3-65.闇と実験
ドアの向こうに広がっていた光景は…普通の広さの小部屋だった。広すぎもせず、狭すぎもしない丁度良い広さである。
部屋に置かれているソファーや本棚等の家具類は、存在感を主張しすぎる事はないが高級感は失っていない。
センスの良い人が創り上げた自慢の部屋。
と表現するのがピッタシの部屋だった。
しかし、火乃花とルーチェの抱いた感想はそれだけではなかった。
「こんなに広いビルで、この階はこの部屋だけですか?」
「そうですわね…。明らかに使ってる面積が狭すぎるのですわ。」
部屋の主、ラーバルは苦笑いをするしかない。
「まずは、素敵なお部屋ですね。とか言うのがお世辞ってものなんだがなぁ。良くも悪くも素直だね君達は。」
ラーバルはソファーに座ると、火乃花達に手振りで座るように案内する。
特に断る理由もない火乃花とルーチェはソファーに腰掛けた。座ってみると見た目よりもだいぶ柔らかく、座り心地は抜群だ。
「ふぅ。」
魔商庁クルーズで疲れ切っていた火乃花は、その座り心地に思わず息をついてしまう。
「ははは。大分お疲れの様だね。まぁ、私があっちこっち連れ回してしまいましたからね。さてと、大体案内は終わったから何か質問があれば答えるがどうですか?」
ラーバルから投げられた質問タイム。火乃花達の目的を達成する為にも、探りを入れたいのは山々ではあるが…聞き方を間違えれば疑われてしまう。火乃花はどうやって聞くか悩む。
しかし、火乃花は忘れていた。隣に大胆に色々とぶっこむことが出来る友達が居る事を。
人差し指を口に当てて虚空を見ていたルーチェが、何かを思いついたのか人差し指を立てたまま顔の横に手を持ってくる。
ピコンの効果音が似合いそうなポーズである。
さてさて、ルーチェ劇場の開幕だ。




