2-7-29.授業 魔法学
魔法学の授業をする為に上位クラスへ現れたラルフは、何故か服が所々焦げていた。穴も空いている。
だが不思議な事に、教卓の前に立ったラルフは、外見の酷さからは想像もつかない程に、いつも通りのラルフだった。まるで服がボロボロな事が当たり前であるかのような堂々とした態度である。
「よし。授業をするぞー。みんなノートの準備は出来てるか?恐らく既に知ってる内容もあると思うけど、ちゃんと聞けよ。その前に…」
と、ラルフが授業とは関係がない別の話を始める。それを何となく聞き流しながら、龍人は教室の1番後ろ、窓側の席から斜め前の席に座るレイラを眺めていた。
別にやましい気持ちがあって見ているわけでは無い。龍人が見た限りでレイラは基礎魔法の授業に於いて最初は特段目立つ所が無かったのだが、回数を重ねる毎に着実に魔力の制御が上手くなっていた。恐らく、クラスでトップレベルの実力を誇る火乃花をも上回る制御力を持っている。と、龍人は考えている。
加えてあの背の低さに、可愛らしさ。そんなレイラを何となく眺めていただけだ。もう1度言おう。レイラを眺める龍人にやましい気持ちは無い。…多分。
「…!おーい!龍人ー?龍人くーん?!」
レイラをボケーっと眺めていた龍人は、自分がラルフに呼ばれている事に気づく。完全にラルフの話は右から左に流れており、何を言っていたかサッパリ覚えていなかった。怒られる前に謝ってしまえと、龍人は勢い良く立ち上がった。
「はいっ!すいません!ボケっとしてました!なんでもやります!」
クラスの皆はそんな龍人を見てクスクス笑っている。ちょっと何かおかしい?と思ったのだが、すぐにその答えがラルフから発せられた。
「お、いいねぇ。ボケッとしてた割には、立候補か!じゃあ任せたぞ!ルーチェとも仲良くなー。」
「へ?えっと、先生はなんの…」
「さて!ルーチェと龍人は話があるから前に来い!他の奴らはのんびりしてろー。」
龍人の疑問を軽くぶった切ったラルフは、龍人とルーチェなる人物を前に呼び寄せた。
(いやいやいやいや!絶対これ面倒くさいやつだろ!えっ?てかマジで何をやらされるんだ?)
確実にやっかいな事になった気がする龍人は、気乗りしないままノロノロとラルフの下へと進んでいく。