9-3-59.闇と実験
またまた現れた白い廊下。ただ、今回は十字路になっている。レイラの見ている位置からは、十字路の先にあるドア以外は特に何も見当たらない。
(ホントどうなってるんだろ?)
レイラは十字路まで進み左右の通路を覗き込んだ。各通路の先にはドアがあり、通路の左右にも1つずつドアが設置されている。
レイラは通路の左右に設置されているドアを開けようと試すが、4つとも全てロックされていた。通路の突き当たりにあるドアの内、2つもロックされている。残りの1つ(レイラが入って来たドアから見て十字路を右に曲がった先)のドアが開かなければ、レイラは行く当てが無くなるが…。
しかし、そのドアはロックされていなかった。
(なんか…誘導されてるみたいだな。)
1つだけドアが開いているという状況がレイラを不安にさせる。まるで誘い込まれているかのような感覚。
十分に警戒しながら捻ったドアノブを押し、ドアを開けていく。
ドアの先にあったのは…暗闇だった。
真っ白な空間に居たからだろうか、漆黒の暗闇と表現をしていい程に暗く感じてしまう。
レイラはドアの先に入るのを躊躇ってしまう。
(どうしよう…。何か嫌な予感がするな…。)
ドアを1度閉めると、レイラは深呼吸を繰り返す。
「行かなきゃ…始まらないよね。」
レイラは今まで表立って動く人生は送って来なかった。人の影に隠れて…とまではいかないが、自分から進んで何かを。という事をした事が無かった。故に、今、レイラはその殻を破ろうとしている。
それが勇気と呼ぶのか…無謀な勇気か懸命な勇気なのか。
「よし。」
レイラはもう一度白のドアを開け、暗闇の空間を覗き込む。
(あ、何か光ってる。)
先程よりも落ち着いて見たことで、暗闇しか見えなかった空間に緑や赤の点滅する光を見て取ることができた。
耳を澄ますと、コポコポやらゴポゴポといった音も聞こえてきた。
(水が何処かに溜まってるのかな?)
レイラはゆっくり手探りで部屋をすすむ。水の音がする所とチカチカ光る所がほぼ同じ方向から聞こえて来る。
前に手を伸ばしながら歩くレイラの指先にヒンヤリとしたものが触れた。レイラはその感触を確かめる。
(これは…ガラスかな?)
チカチカとした光はレイラの頭上と足元にあり、水の様な音は目の前から聞こえている。
(この触ってる物が何か気になるなぁ。私の魔法で光らせるのは…)
レイラは治癒魔法を掌に発動させる。淡い光が右手を包み、その手を前方へと翳したレイラは動きを止めた。
それと同時に首に強い衝撃が走り、レイラは意識を手離したのだった。




