9-3-58.闇と実験
一歩一歩慎重に階段を踏み締める。階段の上にも下にも人の気配はなく、レイラの足音だけが階段にこだまする。
階段の下にはドアがあった。白い…真っ白な…いや、純白と表現してもいい程に透き通った白のドアだ。
少しの間見とれていたレイラは思い直し、そっとドアノブに触れる。ヒンヤリとした感触が手のひらを刺激する。ドアノブを捻るとドアは音を立てずにゆっくりと開いていった。
(あ、普通に開くんだね。)
魔法協会の地下に続く怪しい階段にあるドアなので、開かないものだと思っていたレイラは意外に思いながらもドアの向こうを覗いた。
「うわ…。」
ドアの向こうは、レイラが思わず声を漏らしてしまう程に白一色だった。余りにも白いために遠近感がやや覚束なくなる。
ドアからは一本の廊下が真っ直ぐ伸びており、左右に3つ…計6つのドアが設置されている。
レイラは後ろ手にドアを閉めると、廊下を歩き始めた。試しに右側にあるドアを開けようとしてみるが、ロックされている。
(んー、どこか開くドアないのかな。)
そのまま残り5つのドアも試してみるが全てロックされていた。
(後はこのドアだね。)
レイラは廊下の先に設置されているドアの前に立つ。このドアが開かなければ進む当てが無くなってしまう。
(お願い…開いて!)
レイラの思いが伝わったのか、ドアは何の抵抗もなくスッと開いた。
(良かったー。)
レイラはホッとしながらドアの向こうを覗く。
そこは…また白一色の廊下が伸びていた。




