9-3-51.闇と実験
ラルフと龍人が店の奥にある小部屋に入ってから数時間後。ようやく店の中から客がいなくなった。
(じゃ、ちょっと早いけど店を閉めるかしらん。)
ドレッサーはクネクネ歩き、店のドアを施錠する。
(ラルフちゃんとあの男の子…龍人ちゃんだっけ?は中で何をしてるのかしらねー。ラルフちゃんって私の裏の顔をバラすのに全然抵抗ないのかしら。それはそれで困っちゃうのよねぇ。)
あれこれ考えながらドレッサーは2人が待機する部屋のドアを開けた。
「お待たせっん!…………ちょっと………何をしたのよーー!!」
ドレッサーが見たものは…
魔法に耐性がある素材で作り、街立魔法学院の様に環境を設定し、空間拡張も可能な設備が揃った部屋。
そこがボッロボロになっていたのだった。
椅子に座って汗を拭いているラルフは苦笑い。
「悪りいな。龍人の特訓してたら拡張した空間が何回か弾けちまったんだよ。」
「弾けたって…あんた達どんだけハードな特訓してたのよ?」
ドレッサーは床に転がっている龍人に目線を向けるが、こちらは全然動かない。
ラルフは魔法で取り出した缶ジュースを飲みながら答える。
「思ったより龍人が頑張るから楽しくなっちまってよ。久々に召喚魔法使っちまった。いやーやりすぎたな。あ、イヤらしくない意味でだぞ?」
ドレッサーはしなっと頭を下げて溜息をつく。
(本当にラルフちゃんは昔から変わらないわねん。エロを求めないラルフちゃんを一回は見てみたいわん。)
「さっそく話の本題に移りたいんだけどん、…こんなボロボロの部屋で話すのもは私はいやっ。パパッと直すから待っててね。」
「おう、よろしく!」
壊した張本人に悪びれた様子は全く無いらしい。ドレッサーは内心で苦笑しながら魔法を発動させた。
床に倒れていた龍人はドレッサーの魔法を見て息を飲む。
(魔法ってこんな事出来るのか?)
ドレッサーは淡い光に包まれると、部屋の壊れている部分に向けて滑らかに手を伸ばす。それに合わせて光が浮遊。その光が壊れた部分に触れると一瞬で元通りに復元された。
ものの数分で部屋が壊れる前の状態へと復元される。
ラルフが口笛を吹く。どことなく楽しそうである。
「いやー、ドレッサーの魔法はいつ見ても圧巻だよな。」
「あらぁー!じゃぁ、じゃぁチューする?しちゃう!?」
ラルフににじり寄るドレッサー。
「は…はは。俺より若い男のがいいだろ?!そこに転がってる龍人なら逃げられないから犯し放題だぞ!なっ!?」
滅多に見ることのない必死なラルフを珍しいと思いながら、龍人も必死に体を動かそうとしていた。
そう。再び訪れた貞操の危機。龍人は残る全ての力を振り絞って上体を持ち上げた。




