9-3-28.闇と実験
建物を一撃で崩壊させた猪は、再びノッシノッシと瓦礫の中から這い出てくる。
「おいおい…。俺の攻撃じゃ止めらんないぞ。…いや、アレをやってみるか。」
バルクは拳を強く握ると、後ろに引いて構える。渾身の一撃を放つ構えだ。
猪はバルクに鼻先を向けると、再び前脚で地面を掻き、突進を開始する。
猪の脚の振動で街魔通りが小さな地震の様に揺れるが、バルクは魔力で固定をして猪を迎え討つ。
先程の交錯で学習をしたのか、バルクまで10m程の所で鼻先に風の渦が現れる。
しかし、バルクが怯む事は無かった。むしろ不敵な笑みを浮かべていると言えるだろう。
「そんなんで、俺が負けると思うなっ!よっ!」
バルクは全身を使って拳を地面へと撃ち込んだ。
猪の前脚部分の地面が捲り上がりながら隆起する。それに合わせて猪の後脚部分の地面が陥没。
猪は前脚を天高く上げながらひっくり返っていった。
「ぶひょぶひひひぶほん!」
謎の声を上げる猪。
バルクは雄叫びを上げる。
「うおっしゃぁぁ!見たか豚っ鼻ぁ!」
猪は陥没した地面にスッポリとはまってしまって動く事が出来ない。ジタバタする猪。イマイチな例えをするならば、トイレにお尻がハマった子供。
ここでもう1頭の猪が立ち上がる。
「ブルル。ブルル。」
仲間が倒された事で興奮しているのだろうか。鼻を鳴らしながら、バルクに威嚇を始めている。
「お、もう1頭もくるか。パパッと倒してやんよ!」
調子に乗り始めたバルク。
猪は雄叫びをあげると、バルクに向かって突進を開始した。




