9-3-24.闇と実験
四肢を貫かれた事で、熊は崩れ落ちる。遼は熊に重力倍加を掛けて地面に押し付けると、龍人に向かって歩く熊に銃口を向ける。
再び鋭い発射音。
右肩を貫かれた熊は動きを止めると、顔を遼の方へ向ける。そして、息を吸い込み咆哮を放った。衝撃波が熊の口から発生、遼へ襲いかかる。
遼は魔法壁で衝撃波を防ぐと、再び銃弾を撃ち始めた。
炎縄で熊の動きを止めていた火乃花は、遼の使った魔法に驚いていた。
(遼君が持ってる属性って、属性【重力】の1つだったわよね。今のは水に見えたんだけど…。今まで隠してたのかしら?それか今さっき使えるようになった?でもそんな事って…。)
火乃花があれこれと考えている内に、遼の活躍で2頭目の熊が倒れる。
遼はすぐさま龍人の所へ駆け寄る。
「龍人!大丈夫!?」
龍人は漸く息を吸えるようになってきたのか、浅く胸を上下させている。
「あぁ…。なんとか、かな。それより遼、さっきの魔法はどうしたんだ?」
遼はやや困った表情でレヴィアタンに目をやる。
「それがさ、銃が光って触れたら姉さんの声が聞こえてさ。俺にも良く分かんないんだ。…もう使えないし。」
遼の言葉通り、レヴィアタンの蒼い光はすでに収まっていた。
「茜さんの声か…。どういう事だろうな…。」
「んー、刻印が光ってたから、それが関係してるとは思うんだけど。」
「なるほどな。取り敢えず、この状況を打破してから考えるか。俺はルーチェを助ける。遼は火乃花を頼むぞ。」
龍人は軋む身体に鞭を打ちながら立ち上がる。
「龍人…戦えるの?」
遼は龍人の事をかなり心配している様だ。しかし、現在の状況は休む事を許す状況では無い。
「大丈夫だ。休んでらんないだろ。行くぞ!」
「…分かった!」
龍人と遼は駆け出した。




