2-7-25.授業 基礎魔法
火乃花によって悶絶し倒れて痙攣していたラルフは、少しの間沈黙した後にゆっくりと立ち上がった。若干内股気味なのは見て見ぬ振りをしてあげるべきだろう。恐らく、彼にはまだ激痛の余韻が残っているはずだから。
だが、そんな状況であってもラルフは教師としての務めを果たそうとする。天晴れ教師魂かな。
「よ、よし、説明するから、火乃花はその通りにやってくれ。」
やはり痛みが残っているのだろう。時折顔を顰めて言葉が詰まる。
「まず、矢に魔力を通して浮かべる。…そうだ。次に、1本目の矢をどんな風に動かして最後のリングまで通すかをイメージするんだ。そのイメージを矢に設定するんだ。それが出来たら2本目だ。1本目の設定を崩さないように…つまり保ったまま2本目のコースを設定してみろ。2本とも設定が出来たら、後は送り出すだけだ。簡単だろ?」
簡単…の言葉に反して火乃花は難しい顔をする。どうやら上手くいかないようだ。
「変態先生、設定の仕方が全然わかんないんですけど。」
「変態!?変態ねぇ。ま、そー思われてもしょうがないか。えーと、設定の仕方だな。それは口では説明するのが難しいんだよなぁ。敢えて言うなら、通る道を矢に伝える。予め通る道を轢いておく。って感じだ。これが出来れば、1人で同時に複数の魔法を操る基礎が出来た事になんだよな。」
「変態先生。もう少しちゃんと説明出来ないんですか?」
「む、そんなに怒るなよ。なにも揉んだのは俺だけじゃ無いだろうに。そうだなぁ。矢の中にこれから通るルートを記憶させるって感じだな。凝縮して詰め込むってのも近い。まぁ、何回かやってみれば感覚を掴めるはずだ。なんたってお前らは上位クラスの生徒なんだからな。ある程度はセンスのある生徒が集まってるはずだ。」
火乃花はまだ納得していない様子だが、ラルフの言葉で数人の生徒が動き出したのを見て、これ以上追求するのを諦めたようだ。だが、まだ怒りは収まって無いらしい。
「ま、いいわ。後でたっぷり殴ってやる。」
そう呟いた火乃花はラルフを睨んだ後に、矢を浮かべたままリングの並びを見てルートの設定の感覚を習得すべく集中し始めた。




