9-3-20.闇と実験
龍人の前面に魔法陣が6つ展開される。魔法陣の中心点に隣の魔法陣の辺が接する形で、円を描くように配列される。更に、重なり合った魔法陣を覆う形で巨大な魔法陣が展開。
「こいつら、只の熊じゃねぇだろ!?気を抜くな!」
龍人はルーチェと火乃花に叫ぶと、魔法陣を発動させた。巨大な光の奔流が放たれる。それは前方から突進中の熊を呑み込み、弧を描きながら上空へと駆け上がった。
龍人は続けて魔法陣に手を突っ込み、剣を取り出す。
愛用の剣ではなく、汎用の剣だ。龍人は魔力で剣を覆うと、龍人の後方…ルーチェが受け止めている熊の背中を斬りつけた。
斜めに斬撃を走らせ、そのまま反動を利用して斬り上げる。
しかし、剣の刃は熊の手で阻まれてしまう。
斬撃を受け止めた熊の手に魔力が集中する。それに気づいた龍人の背筋に寒いものが走る。
(マズイ!)
咄嗟に剣を手放して防御壁を展開しつつ離れる。熊は龍人目掛けて手を振り下ろした。防御壁に熊の手が掠った衝撃で龍人は吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ…!」
空中で体勢を立て直して地面に着地する。顔を上げると、熊がその場で両手を振り下ろす所だった。
クマの両手が地面にめり込む。両手を中心に地面が波状に剥がれていく。その衝撃は空気を震わし、衝撃波をも生み出した。
(なんて威力だ!)
龍人は球状に展開した魔法壁で衝撃波を防ぎ、魔力で足下を固定。何とか衝撃波を防ぎ切る。
衝撃で辺りに立ち込めた砂埃が晴れると、変わり果てた街魔通りが目に飛び込んで来た。
熊が両手を振り下ろした地点を中心に道路は大きく陥没し、破片が辺りに散らばっている。
ルーチェと火乃花も少し離れた所に倒れていた。大きな怪我はしていないらしく、ゆっくりと起き上がりつつある。
恐るべきは…破壊を起こした熊だ。一番近くで衝撃を受けたはずなのに、大した外傷も無い。のっしのっしと龍人に向かって歩み寄ってくる。
(くそっ。ここまで魔力が強いと…。)
通常の魔法では殆ど効果がない事が、先程の攻防で証明されてしまう。龍人の複合魔法陣での光魔法が直撃した2頭の熊も起き上がりつつあるのだ。
(構築型魔法陣で強力な魔法を使うか?けど、こんな街中で使うと…。やっぱ無理だな。弱点属性とか無いかな。)
龍人は手当たり次第に様々な属性の矢を熊に向かって放ち始める。




