9-3-16.闇と実験
「いてててて。校長!暴力は反対ですよ。ひひっ。」
「ふむ。それで、お主は何をしにここに来たのであるかね?」
キタルは何かを思い出したのか、人差し指を立てる。
「そうでした。動物が魔法を使うという異常事態なので、教師を派遣した方が良いかと思ったんです。」
「それなら心配はご無用じゃ。ラルフが既に動いているのである。」
「ラルフが…。それでは僕も動きますね。」
「駄目なのである。」
ヘヴィーは即答で却下する。
「何でですか!?こんな貴重なサンプルを入手するチャンスはないのに…。」
ヘヴィーは目を細めると、薄く笑みを作る。
「お主には、してもらいたい事があるのじゃ。」
「…なんですか?」
事件現場に行く事を却下されたキタルは、完全に拗ねた態度で応じる。
「今回の事件の根本的問題を解決する事じゃ。」
ヘヴィーはそう伝えると、一枚の羊皮紙をキタルに渡す。
「…これは。そうか、そうかそうかそうかそうか!分かりました。僕の実験テーマから少し外れますが、こんなに面白い実験はありませんね。ただ、実際に実験をする事が出来ないのが難点だが…。やってやろうじゃないか。ひひっ。これを論証できれば…ひひひっ。ふひっ。じゃあ、直ぐに実験をしないとだ。失礼します。」
キタルは羊皮紙を大事そうに抱えながら校長をさっさと出て行った。
「ふむふむ。相変わらずイカれとるの。まぁ、それでもキタルの頭脳は優秀じゃ。頼んだのである。」
ポリポリとクッキーを食べる音が部屋に響く。既にクッキー缶の中は半分以上が消化されていた。
「このクッキー美味しいのである。」
…場面は再び街魔通りへと戻る。




