9-3-15.闇と実験
街立魔法学院校長室。
ヘヴィー=グラムはソファーにゆったりと座りながら、クッキーをかじっていた。
ポリポリとクッキーを食べる音が響く中、ドアがノックされる。
「どうぞなのである。」
ゆっくりとドアが開き、中に入ってきたのは白衣にメガネを掛けた男だ。白髪が混じったボサボサの頭を揺らし、フラフラと歩いてくる。
「なんじゃ。また徹夜で実験かの?キタル=ディゾル先生。」
「ひひっ。クリスタルを媒体にした転移魔法の実験で発見がありまして。こうしてここに来るのすら勿体無い位にいい所なんです。」
肩を揺らしながら笑う姿はマッドサイエンティストそのものだ。
「ふむ。そんな忙しい中にわざわざ私の下を訪ねてくる理由を聞かせて欲しいのである。」
「…今、まさに今、街魔通りで起きている事件を知ってますか?」
「勿論、知っているのである。それがどうしたのじゃ?」
「こんなに楽しい事件なのに、静観を決め込むんですね。くくくっ。」
挑発とも取れるセリフにもヘヴィーは動じる事なく、クッキーをかじり続ける。
「続けふのである。」
食べながら話している為、呂律が回らないのはしょうがないのだろうか。
「ククッ!何を言ってるんですか!動物が魔法を使うんですよ!あの動物が!くくくく。家畜やペットとしてしか有用性が無かったあの動物が!こんな事、魔法街の歴史にないんだ。僕達は歴史的瞬間に立ち会っているんですよ!?」
キタルは手を広げ、天を仰ぐような姿勢を取る。
「そもそも、僕達の居る星…魔法街には魔獣と呼ばれる生物が居ない。魔法が全ての星なのに。なのに、召喚獣がいるんですよ?その謎が紐解かれようとしてるんです。魔法街の理が壊されようとしてるんだ!そんな、そんな状況で落ち着いていられますか!?これは絶対に誰かの仕業だ…誰かの仕業なんだ。そもそも動物に魔法を使える理由が無いんだ。動物には魔力が無いんだから。じゃあ何故、何故魔法を使うのか?それは魔力を持ったからに違いない。…突然変異であるはずが無いんだ。誰かがやったんだ。僕は、僕はそいつを見つけてやる。」
途中からヘヴィーの存在を忘れ、自分の世界に入ってしまったキタルにクッキーを投げる。パスンとボサボサの髪に埋まるクッキー。
それでもこちら側に戻ってこないキタルに溜息を付くと、ヘヴィーは杖を取り出してヒョイと振る。
すると、キタルの体が急に180度回転し、頭から床に落ちた。




