9-3-11.闇と実験
スイは人々が取り囲む先に【復讐】するべき相手が居ると直感で感じ、人を掻き分けながら進む。
人の壁を抜けた先には3匹の犬がいた。そして、その犬達が纏うモノ。
「…どういうことだ?」
スイもラルフと同じ疑問を抱く。
だが、スイはここで止まることはなかった。彼の頭は【復讐】の言葉で埋め尽くされていたのだ。
刀を抜き、正眼に構える。
犬の1匹がスイに気づき、唸り始めた。
周りの人々はシン…と静まり返り
、スイの行方を見守る。
先に動いたのは犬だった。よだれを撒き散らしながら吠えると、周りに浮遊する水が針状になりスイを襲う。
(やはり…。何故だ?)
スイは頭の片隅に疑問を抱きつつ、水の針を避けながら直進する。
下からの斬り上げ。しかし、犬の前に出現した水の膜によって防がれてしまう。
(この薄さの水膜で防ぐだと?)
「グル…。」
犬の目が怪しく光る。
「ちっ…!」
咄嗟にその場を跳び退くと、高密度の水圧弾が連続で放たれる。
スイの刀が淡く光り、刀身に水が纏う。スイは着地すると刀を連続で振り抜く。刀の軌道に合わせて水の刃が飛翔。水圧弾と衝突し互いにその身を散らした。
一連の攻防を見た人々にはざわめきが広がっていた。
「おい、今の見たか?」
「犬が魔法を使っているわ。」
「あれはなんだ?トリックか?」
「誰かが犬が魔法を使う様に見せかけてるんじゃないのか?」
「これって何かの見世物なの?」
「パパ、なんでワンちゃんが魔法使うの?」
人々のざわめきは伝播していく。
「ワォーン!」
その遠吠えはいきなりだった。
風を纏う犬が発声源。周囲に強風が吹き始めた。




