9-3-6.闇と実験
PM10:50
魔法の台所は何時になく活気付いていた。
「おーい!龍人、遼!棚の整理終わったかー!?次はレジだレジ!客が並んでるぞ!」
「今終わりました!いきまーす!」
龍人と遼は棚から離れると、小走りでレジへと向かう。
「マジさ、何で俺達が店の手伝いをしなきゃなんないんだよ?」
「しょうがないよ。レイラが休みなんだし。」
不機嫌な顔でブーブー言う龍人を、遼は苦笑しながら宥める。レイラの事を出されると弱い龍人は、態度を少しだけ丸くする。
「まぁ、分かるんだけどさ。今までシェフズ1人でこの店やってたんだろ?何か釈然としないんだよなぁ。」
「…確かに。しかもタダ働き同然だもんね。」
「おい!なに喋ってんだ!このピークを乗り越えてから喋れ!」
シェフズの怒りの声が飛んでくる。龍人と遼は顔を見合わせると、前者は溜息、後者は苦笑いを浮かべながらレジへと走る。
1時間後…。
「やっと落ち着いたー!」
龍人は両手を上げながら椅子で伸びをする。
「ほんと…店ってあんなに混むもんなんだね。」
隣では背もたれを前にして座った遼が、グッタリと顎を乗せていた。
「はっはっは!あんなに混んだのは久し振りだ!」
腕を組んで豪快に笑うシェフズは疲れた様子が全くない。
「にしても混み過ぎっすよ!なんで今日に限ってあんなに混んだんだか…。」
龍人の呟きにシェフズは首を捻る。
「ま、確かに今日は何のイベントもしてないからな。偶然が重なったんだろ。どっちにしても、ラッキーだな!はっはっは!じゃ、お前達は休憩に行っていいぞ。そうだな….1時間位は休んでもらってだな、13:00のちょっと前に戻ってきてくれ。」
休憩後もがっつり働かされる気がして、龍人と遼はげんなりしながら店の奥にある休憩スペースに向かったのだった。




