9-3-5.闇と実験
魔法協会ギルド受付。
「あの、すいません。」
「…なんだ?」
「えっと、ギルドに入りたいんですけど…。」
「…試験の申込書を持ってくる。少し待ってろ。」
受付の男は椅子から立ち上がると、受付の奥へと姿を消した。
レイラは受付の前で立って待つ。受付の周りには、ギルドの構成員と思われる人達が何かの冊子を見て話し合っている。
(思ってたよりも暗いイメージだなぁ。ちょっと怖いかも。)
周りに女性がいない事も、レイラを不安にさせる一因となっていた。
(女の人も結構いるって聞いてたんだけど…。)
自分が場違いである感覚が次第に大きくなっていく。
(でも、龍人君と遼君と一緒にギルドで仕事してみたいし…。こんなトコでめげてちゃだめだよね!)
レイラは夏休みから魔法の台所でバイトをしている。そもそものきっかけが、店主であるシェフズに上手く誘導された感じが否めないが…。それでも、仕事をする楽しさを十分に感じることが出来ている。
夏休み後も魔法の台所でバイトをする事も考えたのだが、ここでレイラの乙女心が動く事となる。
龍人君と一緒に仕事をしてみたい。
レイラはこの言葉が胸の内からスッと出てきたのだ。そして、ギルドに入る事を決意した。中々安易な考えである事は否めないが、恋心は時に人を大胆に、そして馬鹿にさせる。
「おい、待たせたな。」
思いを馳せていたレイラは、受付の男の声で意識を現実に引き戻される。
「これが試験の申込書だ。太枠内の記入をしてくれ。ちなみに、試験の内容は当日まで教えることは出来ない。いい意味でリラックスしておくんだな。」
「ありがとうございます。」
レイラは書類を受け取ると、ペコリと頭を下げる。
「試験は毎週日曜日の朝に行っている。希望日も忘れずに記入するんだぞ。」
「はい。分かりました。今ここで書いちゃっても大丈夫ですか?」
「あぁ。問題無い。」
「ありがとうございます。」
レイラはペンを取ると、必要事項を記入していく。
「書けました。よろしくお願いします。」
「はいよ。受付時間が…PM0:58だな。じゃ、日曜日の朝にここに来てくれ。」
「分かりました。よろしくお願いします!」
レイラはチョコンとお辞儀をすると、魔法協会から出る為に歩き出した。




