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Colony  作者: Scherz
第三章 魔法街 光の裏側
383/994

9-3-4.闇と実験



火乃花とルーチェは、街魔通りに併設されたベンチでアイスを食べていた。容赦のない日差しでどんどん溶けるので、絶えずペロペロしなければならない。


「ねぇ、ルーチェ。おかしくない?」


「そうですわね。これだけ暑いのに、なんで日向でアイスを食べているのでしょう?」


意図した質問と全く違う答えが帰ってきた為、火乃花はがっくしと頭を下げる。


「違うわよ。ペットショップの事。執行部の人から聞いた情報と噛み合わなさすぎるわ。」


「あ、そのことですのね。私にも原因がさっぱり分かりませんの。」


火乃花とルーチェは午前中から、魔法街南区のペットショップを全て当たっていた。しかし、販売数が大幅に増えている店が殆どなかったのだ。

それではと、念の為に新店の出店状況も確認したのだが、こちらは執行部の伝えてきた通りに増えていなかった。


「そもそもよ、中央区から動物の輸出が増えてるのに、販売数が増えてないっておかしな話よ。それどころか、入荷量が増えた店も無いなんて。輸入された動物達はどこに行っちゃったのかしら。」


ルーチェは溶けたアイスがコーンを伝うのを舐めて掬い取ると、空を見上げる。


「んー、そうですわね…。輸出入を取り仕切ってるのは魔商庁で、その直轄部署は魔法協会の中にありますわ。となると…。いえ、でも輸出入をしている業者も…。」


ルーチェはそのまま黙り、考え込んでしまう。


火乃花はルーチェから視線を外すと、街魔通りを歩く人々を観察する。


(のどかよねぇ。私も学生らしく遊んで過ごしたいわ。)


ここ最近、何度も思う気持ち。いくらしっかりしているとは言え、火乃花も学生の1人である。仲の良い友達と遊びたい気持ちは少なからずとも存在する。


隣に座るルーチェを見ると、相変わらず真剣な顔で考え込んでいる。火乃花の目線はルーチェの手元へと移動した。


「ルーチェ…アイス垂れるわ。」


「えっ?あら、あらあらですわ!」


ルーチェは慌ててアイスをペロペロ舐め始める。

あまりにも丁寧にペロペロするルーチェの姿を見ている内に、火乃花は何だか恥ずかしくなってくる。


「ルーチェ、その舐め方…ちょっとエロいわよ?」


「そうですの?わたし、いつもこんな感じでアイスを食べていますのに。」


何故か微妙に会話のニュアンスがズレている感覚。


(ま、ルーチェの事だし、とやかく言う必要はないかしらね。)


ふと視界に時計が入る。


PM0:55


火乃花は残りのアイスを頬張り始めた。





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