9-3-3.闇と実験
ネネが戻ってくるのを待つ間、ラルフは時計で時間を確認する。
PM0:50
(もうこんな時間か。一回校長の所にでも行って、調査の報告でもするか。)
「ご主人様お待たせしましたー!」
ネネが入ってくる。その手に《抱えられている》パフェ。
「ちょっ…!おい、でかすぎるだろ!」
「あら、これ位食べて頂かないと困ります!ネネの愛情の大きさですよ!?」
(それだけ危険性の高い情報ってか。その癖、名前は無償で出してくんだもんな。…やられたわ。流石は情報通ってとこか。)
ラルフは目の前に置かれた巨大パフェをスプーンで掬い始める。
「さっきの続きですが、緑の短髪。身長は170cm。体格は筋肉がしっかりとついている感じ。耳に付けてるピアスが特徴的。ヤンキーボクサーな感じです。」
「…良くそこ迄調べ上げてるな。」
ラルフは情報の細かさに舌を巻く。
「私はただのメイドですっ。ご主人様に喜んでもらえるのが至上の幸せなんですぅ。」
「はいはい。」
流石のラルフもネネの切り替えの早さに、少し置いていかれ気味だ。
(にしても、昨日の夜に会ったあいつと外見がほぼ一致してるな。そこを中心に探りを入れるか?)
「そんで、クリスタルが盗みの目的って考える理由はなんだ?」
「んー、サービスですよぉ?」
何故かラルフにすり寄るネネ。
耳元で囁く。
「盗難が連続で起きる前に、街魔通りでは何度かクリスタルの盗難が起きています。魔力蓄積機が暴走した事件の前後からですね。そこから、クリスタルの盗難が多発しています。最近、警察が本格的に動き始めたのを境に、その他の物品の盗難も増えました。という事は…。」
ラルフの耳元で囁く様に話すので、吐息がいちいち耳にかかり、いちいちゾクゾクしながら話を聞いていた。
ネネの口が耳から離れた所で、ラルフは強張っていた身体を弛緩させる。
「なるほどな。色々と繋がってきたな。」
一先ず、知りたい情報をある程度入手する事が出来たラルフは、純粋な客としてメイド喫茶を楽しむ事にする。
余談だが、店の名前は「あなたと私の萌え心」。
「これ全部食べたら、膝枕してもらうぞ?」
「あら、ご主人様ったらぁ。甘えん坊なんですねっ!」
街立魔法学院の学生が見ていたら、完全にドン引きされそうな状況を楽しみ始めたラルフ。
PM0:59
ほんの少しの間の、甘い時間が始まる。




