9-3-2.闇と実験
街魔通りのとあるメイド喫茶。
「ご主人様~。ネネのハートが乗ったオムライスお持ちしましたっ。」
メイドの格好をした女性が持って来たのは、ケチャップでハートが描かれたオムライス。ハートの中には、ネネとラルフの名前が書いてある。
「お!待ってました!いーねー。萌えるねー。ここのオムライス美味いからな。」
お客は、もちろんラルフ。目は完全に萌えである。
横に座るメイドに手を出すのかと思いきや、特に反応もせずにオムライスを口に運ぶ。
「それで、今日は何の御用です?」
「最近、裏の方で怪しい動きは無いか?んー、この鳥肉の歯ごたえ抜群だわ!」
「ネネの萌えで出来てる鳥肉ですもの。ご主人様のハートを射抜きたいっ。そうですね、ロジェスという人物をご存知ですか?」
「んー…?知らないなぁ。過去の街立魔法学院の生徒にそーゆー名前の奴も居なかった気がすんぞ。」
オムライスを口に運びながら考えるラルフの口の横には、一粒の米。
「あら、ご主人様。お米粒がお口の横にありますわ。」
ネネは人差し指と親指でその米粒を摘まむと、パクリりと食べてしまう。
「おい!可愛いなー!でもよ、ご主人様のご飯を勝手に食べるのは良く無いぞ?」
「あ、私ったらつい…!ご主人様申し訳ありません!」
「ま、そーゆーとこが良いんだけどな。」
「ふふ。それで、そのロジェスという人物が、ここ最近頻発している盗難事件の近くで目撃される事が多いんです。単なる偶然かも知れませんが。」
「オレンジジュースおかわり!なるほどな。でもよ、盗難事件って何が目的なのか分からないんだろ?高価な物から安価な物まで色々と盗まれてるらしいぞ。」
ネネはお代わりのオレンジジュースを注ぎ、オムライスを食べ終わったラルフの口をおしぼりで拭く。
「まぁ、私の私見にはなるんですが、盗みの本当の目的を悟らせない為の、ダミーの盗みが殆どかと思います。恐らく…盗みの本命はクリスタルかと。」
ラルフの眉がピクリと動く。
「クリスタル…。なぁ、ちなみにロジェスって奴の外見の特徴は?」
「あら、ご主人様!ご飯が無くなりましたわ!デザートにネネ特製巨大パフェなんていかがでしょう?」
ネネの言外による情報料の請求。ラルフは苦笑いをするしかない。
「おれさ、一応ダイエットしてんだけどさ。」
「あら、今のままでも十分に素敵ですよ。」
「はいはい。じゃ、その特製パフェ1つ。」
「かしこまりました!少々お待ちくださいね。」
フリフリのメイド服を揺らしながらネネは部屋から出て行った。




