9-3-1.闇と実験
夏。学生にとっては、最高の自由時間の1つだ。前期と後期の間に挟まれる夏休み。そこでは青春と言える様々なイベントが起きる。恋愛、友情、冒険、旅行…etc.
学生達は限られた時間の中で、思い残すことが無い様に全力でぶつかっていく。
街魔通りも、そんな学生達の活気、熱気で賑わっていた。
街立魔法学院の正門前。そこから伸びる街魔通りには大勢の学生達が歩いている。通りの両サイドに建ち並ぶ店には人が集まり、道の中央を手を取り合った男女が歩く。
毎年見られる、いつも通りの光景。
そこに、1人の異分子が混ざっていた。オープンテラスのあるカフェに、その異分子は座っていた。ブラックのコーヒーを啜り、道ゆく若者を眺める。
耳に付けられたピアスが太陽の光でキラキラと光る。緑色の短髪な事も合わさり、いかにもヤンキースといった出で立ちの男。しかし、周りからは浮いているという事はない。
この魔法街では髪の色が緑位だからといって、特に目を引くほどの特徴という訳では無いのだ。それ程までに、様々な髪の色の人が居るという事である。まるでゲームの世界であるかの様に鮮やかな色の髪が、あちこちを歩いている。
そんな、ヤンキーっぽい以外には特に目立つ様子もない男、ロジェスはコーヒーをテーブルの上に置くと、時計に目をやる。
PM0:55
「そろそろか。」
ロジェスは胸ポケットから水晶の様な物を取り出す。…クリスタルだ。
残りのコーヒーを飲み干すと、ユラっと立ち上がる。
「おい、マスター。会計はココに置いとくぜ。」
店の奥に居る店主はロジェスを見ると軽く手を上げる。
了解。という事なのだろう。
そのままテラスから街魔通りに出たロジェスは、北に向かって歩き始めた。
手から零れ落ちるクリスタル。しかし、ロジェスが拾う事はない。
「クク…クククク。ショーの始まりだぜ。」
PM1:00
ロジェスの手から零れ落ちたクリスタルが光り輝く。




