9-2-33.獣
ラルフから発せられるプレッシャーに、ロジェスは攻撃するのを躊躇い、動きを止める。
(なんだ?攻撃してくると思ったんだが…何か企んでんのか?)
ラルフは思考回路の中で、思い付く限りの予測されるパターンをシミュレーションしていく。
(ま、このままってのもアレだし。仕掛けちまうか。)
ラルフはロジェスへと次元刃を飛ばす。それは明確な形や色を持たず、そこに気配だけを漂わせて飛翔する。
(あ?あの金髪デブ何かしたか?……!?)
ロジェスは前方に気配を察知する。同時に全身が総毛立つ感覚。
必死に体を捻り、今いる位置からの離脱を図る。
「おーおー!良く避けたな! あれを初見で避けるって事は、中々出来るんだな。…そんな奴がなんで一般市民の親子を狙うんだよ?」
「うっせぇんだよデブ!俺には俺の都合があんだ!」
ロジェスは威勢を張るが、頭の中では逃亡経路を必死に模索していた。
先ほどの攻撃。それをギリギリで避けた時に分かってしまった力量の差。その差は愕然とする程のものだった。
(畜生。このまま戦ったら確実に俺がヤられるじゃねぇか。今は…機じゃねぇ!)
「おいデブ!くたばれや!」
ロジェスは両腕の炎を鳥に象り、ラルフ目掛けて飛ばす。
更に自身の周囲に電気の網を張り巡らせた。
「ったくなぁ、こんなんで俺がやられる訳ないだろ。あの電気の網は…俺の転移に対抗してか?ま、チョロいな!」
ラルフは空間を歪曲させて鳥型の炎を弾く。更にロジェスを包む様に空間の断裂を精製。それを広げる事によって電気の網を押し広げる。
「なんだよ…それはよぉ!?てめぇ、マジでなにもんだ!?」
ロジェスは焦る。電気の網が押し広げられた事によって、ロジェスの周りには何もない空間が出来てしまっている。
そして、当然の如くラルフはそこに姿を表す。
ロジェスの前に立ったラルフは相変わらずニヤリと笑みを浮かべていた。
「さて…と、とっ捕まえて全部吐かせてやる。」
「…。」
無言で抵抗の意を示すロジェス。
ラルフは右手の前に次元の穴を開け、そこに手を突っ込んだ。
手を引き抜くと1本の剣を握っていた。




