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Colony  作者: Scherz
第三章 魔法街 光の裏側
364/994

9-2-21.獣



龍人と遼が魔法の台所で警備を始めた翌日、ルーチェとレイラは中央区を歩いていた。


前日に執行部の調査員として、南区の魔具専門店を当たったのだが、クローを販売した店は1つも無かった。そもそも、クローを使う魔法使いがほとんど居ない為、在庫を持っている店も魔法の台所しか無かった。

となると、次に考えられるのは中央区の魔具専門店という事になる。


という過程を踏み、片っ端から当たって行くという、数打ちゃ当たる戦法で歩き回っているのだが…今の所当たりは無い。


「残すは…あの店ね。」


「そうですわね。私もちょっとあの店は苦手ですわ。」


「ルーチェも行ったことあるのね。あの店だけは行きたくなかったんだけど…。」


「でも、行かないわけにはいきませんですわ。火乃花さん、覚悟を決めて行きますわよ。」


2人は嫌な顔をしながらも、MagicShop男女男女のドアをくぐる。


店に入るなり聞こえてきたのは、やはり男の絶叫だった。


「や、やめろ!もう勘弁してくれ!ぶっ…うえ…ぎゃ…待ってく…。」


沈黙。


「さぁてぁ、次はん…あなたねぇ~!」


再び店内に響く男の声。


…一通り店主によるご馳走タイムが終了した所で、ルーチェと火乃花は店主の所に近寄って行く。


「うわ…。」


そこには床に複数の男子と、その中心に満足そうに恍惚とした表情で立つ店主…ドレッサー=アダルツが居た。


「あんらぁ!ブラウニー家のルーチェじゃなぁい!相変わらず素敵な金髪じゃないのぉよぉ?その髪先を指でくるくるしたいわん。」


「お久しぶりですわ。指でくるくるはお断りしますわ。」


ルーチェの声が珍しく硬い。それ位苦手なのかと、火乃花が想像していると、ドレッサーが火乃花を見る。


「あぁん!あなたは…火乃花ちゃんね!覚えてるわよぉん。その肉感的なボディ!そして私のおヒゲをスリスリした時のあの感触!中々に絶品だったわねぇん。どぉ?もっかい私の寵愛に身を委ねてみなぁい?サービスしちゃうわん。」


火乃花は一歩後ずさり、口元を引きつかせる。


「えっと、遠慮しときます。」


「あぁん!あぁん!そんな照れないでいいのよぉん?そんな焦らしプレイ…私、私、燃えちゃうわん!」


「あ…えっと。」


あまりの猛攻に火乃花は対抗出来なくなる。


「ふふ。ふふふふ~。」


近寄るドレッサー。身構える火乃花。

惨劇の幕が開く前に、ルーチェが2人の間に割り込んだ。


「ドレッサーさん。お楽しみは後でお願いしたいのですわ。」


相変わらず硬い声のまま、ルーチェがは執行部からもらったバッジをチラリと見せる。

そのバッジを見た瞬間、ドレッサーの表情が驚きに変わる。


「なるほどねん。あなた達が一緒にいるのは珍しいと思ってたんだけどん。じゃぁ、そうねぇ…店の奥に椅子があるから、少し待っててねん。この店は私1人だから、開けたまま色々話すことは出来ないのよん。今日はもう店を閉めちゃうから。まだ残ってる若者を味わって来るから、大人しく待ってるのよん?」


ドレッサーはクネクネと店の棚の影に消えて行った。


再び響く絶叫。


「ルーチェ…あんた凄いわね。私はあの人の全然駄目よ。」


「小さい頃から何度か来てますの。それでも慣れませんですわ。じゃ、私たちは言われたとおり奥の椅子に座って待ってましょう。」


「そうね。まだまだ時間がかかりそうだし。」


店の中では、別の男子の叫び声が響いていた。



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