9-2-19.獣
「どゆ事っすか?」
「まず、俺の店に誘導する方法は、不自然にならないように、各店主毎の判断で戸締りをする。意図的に緩くするのは俺の店だけだ。とは言っても前から戸締りは緩いからな。がっはっはっ!」
シェフズは豪快に笑うが、龍人と遼が呆れた目で見ているのに気付き、コホンと咳払いをする。
「ん…あとは、犯人に関してなんだが、奴らは店の中に人がいる時に犯行はおかさない。基本的に店の外で事件が起きたり、喧嘩が起きたり、何かが起きた時にだな、店の中の人が揃って外に様子を見に行った間に盗みを働いていやがる。相当の実力者ならそんな小賢しい真似はしないだろう。ここからは俺の予想だが、犯人は恐らく複数だろうな。そして、頭がキレる奴が少なくても1人はいる。ってことはだ、なにか事件があった時に、お前らが周りの状況をしっかりと見てくれれば、不審な動きをする奴を見つけられると踏んでいる。そんでだ、お前達なら犯行グループよりも実力があるはずだ。1人捕まえるのは造作もないことだろ?」
何故か最後のセリフが疑問系になっているが、一応スジは通っていると言える内容である。
(不安な点が1つだけあるけど…。まぁ、それが当たる確率は少ないかな。)
龍人のそんな思考を他所に、遼は成る程と言わんばかりに頷いている。
「龍人、今のシェフズの話なら、なんとか1人位は捕まえられそうじゃない?」
(遼は気づいてないか…。判断が難しいな。クリスタルを盗み続けてるって事は、その目的は換金目的って考えるのが一般的だと思うけど…。それ以外の目的に使ってるって事も否定は出来ないしな。それ以外の目的に使ってた場合、厄介な団体が裏で糸を引いている可能性が高くなるだろ。そうすると…かなり強い奴が出てくる可能性もあるな。犯人を捕まえるにあたって、安全策を用意しておかないとマズイ気がする。)
考え込む龍人を「まだ何か疑ってるの?」と言わんばかりの表情でみる遼。
シェフズも怪訝そうな表情で龍人を見ている。
2人の視線が龍人に集中している今、ここで話を進めるのは龍人の責務であると言えよう。
「色々考えたんだけど、慎重に動けばそこまで大きな危険はなさそうだし、シェフズのプランで犯人を捕まえるか。近距離なら俺、遠距離なら遼が居るから、ある程度の状況には対応出来そうだし。」
龍人の言葉を聞いたシェフズはパァンと手を打ち鳴らす。
「よく言ってくれた!じゃ、今からよろしくな!」




