9-2-17.獣
魔法街南区を半分に分断するように敷かれている大通り…街魔通りに軒先を連ねる店の1つ、魔法の台所ではシェフズと龍人、遼が真剣な顔で何かを話し合っていた。
レイラはレジでその様子を眺めるが、店主から「少しの間店を頼む」と言われている為に話に入る事が出来ない。龍人と遼がシェフズと何かを話し込むという状況。それ自体が珍しいのにも関わらず、更に真剣に話し込むと言う状況。レイラは店番をしながらも、その意識は3人の方に向けてしまっていた。
その様子をチラっと見たシェフズが声を掛ける。
「おい、レイラ!店番店番!」
レイラはビクッとすると、慌てて周りを見る。
すると、そこには5人もの客が会計待ちで並んでいた。
「あ、すいません!どうぞ!」
「全く。龍人が来てるからって注意力が散漫になり過ぎだな。」
「いやいや、むしろ注意…注視?しまくってますよ。」
「ちょいちょいちょい!話がそれてますよ?」
シェフズと遼にいじられ、話を戻そうとする龍人。
「はっはっは。青春してる奴らは面白いな。」
「…で、以前の魔力蓄積機の暴走事件以降に、クリスタルの盗難が増えてるって本当ですか?」
龍人の問いに、シェフズはつまらなそうな顔をしつつも、真剣な顔に戻る。
「そうなんだよ。街魔通り沿いの店で被害が多発してるんだ。1つが高価なクリスタルが頻繁に盗難に合うってこと自体が問題だからな。今回の依頼は魔法の台所だけじゃなくて、街魔通り沿いの全店舗を警備して欲しいんだ。」




