2-7-21.授業 基礎魔法
傍に来た火乃花は疲れきった顔をしていた。彼女も先程から何度も挑戦していたので、大分魔力を消耗しているのだろう。
「ねぇ龍人君、遼君、これってコツとかないのかしら?2つのコースと、矢の位置を把握して同時に違う方向に移動させるのって難しいわよね。ラルフ先生とか複数同時に操ってる人の頭ってどうなってるのかしら。普通じゃない気がする。」
火乃花は「ふぅ。」とため息をつくと龍人の横に座り、凝り固まった身体を解す為に大きく伸びをした。自然と巨乳が強調される。
(おお。)
間近で見るそのボリューム感に、遼は思わず胸を見つめてしまう。龍人は火乃花の胸云々は全く気にしていないようで、他のクラスメイトの授業風景を眺めながら、地面に何かを書き出していた。隣に来て話しかけた火乃花の存在に気付いていないのではないか?と思う位に集中ている龍人は、話しかけても返事が来ない。
恐らく地面に描いている何かがひと段落するまで返事はないだろうと判断した遼は、火乃花に返事をする事にした。
「コツなんてあるのかな?いわゆる同時計算みたいな感じで、頭の中で処理しなきゃ無理そうだよね。そういう補助魔法を使えれば話は別だけど。」
「んー、やっぱりそうよね。多分何かをやってるのは間違いないと思うわ。それを教えないってことは、自分達で気づけってことなのよね。」
「自分で気付けって…鬼だねあの先生。」
「ほんと。やり方を教えてもらった方が早く技術は身につくけど、そこに至るまでの試行錯誤が無くなっちゃうから…それじゃ応用力がつかないって事なのかしらね。道は自分で切り開け。みたいな感じ?」
ここで、火乃花の言葉を聞いた龍人の動きが止まった。龍人は謎の絵が描かれた地面を食い入るように見つめている。真剣な顔は発見をした驚きの顔に変わり、そして喜びの表情へ変化していった。