9-2-16.獣
渡された資料に書かれていた内容は以下の通り。
☆警備
→依頼主…シェフズ=ソーサリ
→詳細は店主から直接聞く事
→期間…状況が改善されるまで。長期に渡る可能性あり。
「なあ…詳細って言っても、依頼主以外は何も書いてないのな。」
「本当だね。…俺はシェフズが依頼主ってだけでイヤな予感しかしないよ。」
「確かに!こき使われそうだわ。…ま、いつもお世話になってるし頑張るか!」
遼は、ちょっとした沈黙を挟んでやる気を出した龍人を見る。そして、小さく笑みを浮かべる。
「龍人さ、今レイラが働いてるの思い出してやる気出したでしょ?」
「…ん?そんな事ないしー。」
「……。」
遼はやや真顔で、無言で、龍人を見る。
「ちょっ!何を疑ってんだよ!?ないないない!」
勝手に焦り出す龍人を見る遼の顔が、少しずつにやけ始める。
「ふ~ん。じゃ、そゆ事にしとこっか。」
「いや、そゆ事にしとくってどゆことだしよ!?」
「そゆ事はそゆ事だよ。」
「そ~ゆ~事じゃなくて、そゆ事?」
「あ、またワケ分かんない事いいだした。じゃぁ、もうさっきの話題は終わりだね。」
「あ…!いつもの癖で。…じゃなくて!変な誤解しなくていいから!」
「誤解っていうか、皆気づいてると思うけど?」
ワァワァ騒ぎながら歩き去る2人を眺める受付の男。
「…不安だ。」
小さな呟きは廊下に吸い込まれていった。




