9-2-14.獣
魔法協会南区支部、魔法協会ギルドの受付。
高嶺龍人は耳を疑っていた。
「え?ちょっと…どーゆー事ですか?俺、まだ1つしか依頼してないですよ?」
「お前、ギルドについての案内書をちゃんと読んだのか?」
受付の男は呆れ声で問いかける。
「受けた依頼の内容が思った以上にハードだったので、見てません!ってか、そんなの貰いましたっけ?」
「…。全く。よく聞けよ?ギルドの各ランクの依頼には、その依頼を成功させた時に、そのランクの依頼を何個成功させたのと同じ評価になるが決まっている。今回、お前が受けた依頼はEランクだと35個分、Dランクだと10個分に換算されるんた。依頼の下にE×35、D×10と書いてあるだろう?」
「なるほど。そーゆことなんですね。それでEランク20件分を満たして、Dランクと!…因みに、余った15件分はどうなるんですか?」
受付の男の口元がニヤリと笑う。
「そんなの、もちろんカウントはされない。」
「…へっ?いや、ちょっと、あんだけ掃除して頑張って終わらせたのに?お婆ちゃんもめっちゃ喜んでくれたんですよ。少し位繰り越しても…。」
「無理なものは無理だ。次のランク目指して頑張るんだな。」
受付の男の無慈悲な言葉に龍人は崩れ落ちる。
約1週間。掃除漬けだった日々が思い出される。その3分の1が無駄に終わったと考えるとやり切れない気持ちで一杯になってしまう。
(もっと堅実的に依頼をこなそう。うん、そうしよう。)
龍人は心の奥で堅く誓うのであった。
「あれ?龍人じゃん!そんな所に座って何やってんの?」
見ると、遼が向こうから歩いて来る所だった。
「いやー、ギルドランクが上がったのは良いんだけど、タダ働き的な事実に心を折られてた。」
「そんだけ言えるんだから、心折れてないでしょ?」
「いやいや、さっぱり言うなって。結構ショックだったんだから。」
「まぁ、依頼ってそんなもんだよね。俺も悪餓鬼達に散々いじくりまわされたよ。」
「悪餓鬼?…想像するだけで大変そうだわ…。」
「でしょ?あ、そう言えば、次に受ける依頼ってもう決めちゃった?」
「…?いや、まだ決めてないよ。」
遼は「よし」とばかりに指を鳴らす。
「イイ依頼があるんだけど、一緒にやらない?受付のおじさん、まだ残ってます?」
「あぁ。まだあるが…Dランクに受諾権利があるのがかなり珍しい上に、基本はBランクが受ける依頼だぞ?」
「何それ。面白そうじゃん。資料見せてもらえません?」
さっきのショックは何処吹く風の龍人が受付に身を乗り出す。




