9-2-13.獣
「いやいや!校長と戦うなんて、嫌な思い出しか残らないんで、全力で拒否しますよ。」
ヘヴィーはつまらなそうな顔をすると、再びソファーに深々と腰をかけた。
「で、なんで俺が通り魔事件関係で動かなきゃいけないんですか?警察とか動いてますよね。それで十分だと思うんですが。」
「確かにそうじゃな。通り魔事件という事件自体が珍しい以外に、特別な事は無いのである。まぁ、しかし、ただ1点だけを除けばじゃがな。」
「ん?その1点って…。致命傷ギリギリの傷ばっかってやつですか?」
「お主…その情報は公にされてないんじゃがのう。まぁ良いのである。ラルフよ…今回の事件にサタナス=フェアズーフが関わっているとの情報が入ったのである。」
その名を聞くや否や、ラルフは思わず立ち上がる。
「ヘヴィー校長…!それってどういう…。そもそも、なんで今更この星に奴が…。」
「それはまだ分からないのである。奴の存在に気づいていると悟られたくないから、ラルフに単独で動いてもらいたいのである。もちろん、名目は学院の生徒が襲われたから。じゃな。」
「…そういう事ですか。奴が絡んでいるとなると、只の通り魔事件じゃなさそうですね。それに、通り魔事件だけで終わるとも思えない。恐らく、その先があります。…4年前みたいな事にはさせません。」
ラルフは何かを思い出したのか、一瞬雰囲気が変貌する。がそれも束の間、すぐにいつも通りのラルフに戻っていた。
ヘヴィーも軽く頷く。
「ラルフよ、頼んだのである。」
街立魔法学院が誇る魔導師ラルフ=ローゼスが、1つの決意を胸に行動を開始する。




