9-2-11.獣
生卵が飛ぶ。行き着く先は遼の頭だ。
クシャベチャ!
「ちょっといい加減に…ぶっ!」
口を開く遼の口目掛けて卵が空中に弧を描く。
遼の体は既に卵だらけで、グチョグチョのベチャベチャだ。
「お前ら…待て!」
遼は卵を投げた犯人…子供達を追いかけ始めた。
ここは南区にある幼稚園。ギルドで1日限定お守りという依頼を見つけ、興味本位で受諾したのが間違いだった。
幼稚園で挨拶をした瞬間からイタズラの嵐である。
お守りを始めてから2時間しか経っていないのだが、既に満身創痍(ある意味では)と言っても過言ではない。
ともあれ、遼は幼稚園の中で悪餓鬼達を追いかけ回していた。
「くらえっ遼ちゃん先生!」
生徒の1人が小さな火球を撃ち出してくる。
「うわっ!」
慌てて身を屈める遼。頭のすぐ上を通過した火球は壁にぶつかって消滅する。
「こら!火事になったらどうするんだよ!」
「この部屋は魔法壁が張ってあるから、思い切り魔法使ってイイって言われてるもんねー!」
「げっ、まじ?」
「マジだよー!みんな遼ちん先生をやっつけろー!」
「「「おー!!」」」
児童達が結束する。
今度は遼が追いかけ回される番になった。形成逆転?
長い悪夢の様な子守りは、まだ始まったばかりだ。
遼が悪餓鬼に翻弄されている頃、街立魔法学院で1つの動きがあった。




