2-7-20.授業 基礎魔法
矢を片手に持って座った遼が疲れた様子を見せながら呟く。
「3段回目は案外簡単じゃんって思ったんだけど…1番難しいね。」
「1本だけだったら簡単なんだけどな。いやー、あのラルフよりも上がいるなんて信じらんないよ。」
そう言いながら龍人も遼の横に座り込んだ。遼が疲労感を漂わせているのに対して、龍人はどちらかというとさっぱりと疲れている印象だ。
龍人や遼が言う通りに2段階目をクリアした生徒にとって、矢を操ってリングを通すのはさほど難しいことではない。
リングは2m置きに設置されていて全長は20m。つまり10個のリングを通すだけである。ここまでなら特に難しい事は無いのだが、問題は矢の本数だ。
1本の矢ならそこ迄苦心せずに…いや、何度も2段階目をクリアした生徒なら簡単にクリア出来る。だが、3段階目は複数本の矢を同時に操作する必要があった。もちろんそれぞれの矢が通るコースはリングの配置が異なっている。同時に同じ様に操作するのではなく、同時に違う挙動で操作する。この難しさは3段階目を誰1人としてクリア出来ていない事からも窺えよう。
授業の目的は魔力の同時操作…らしい。
この難易度が高い3段階目だが、ラルフが見本で見せた時は5本の矢を見事に操作していた。本人は、8本までいけると言っていたが、疲れるからやらないと言う。ラルフらしいと言えばラルフらしいのだろう。
因みにこれは正式な種目としても存在していて、最高記録が12本。その記録保持者は魔聖の1人だ。
そして、龍人及び街立魔法学院1年上位クラスの最高記録は1本である。この差は果てしなく大きい。
龍人と遼の2人は他の生徒が2本の矢を操ろうとして、あらぬ方向にすっ飛ばしているのを眺めながら3段階目の攻略法について話し合っていた。ただ単に同時操作で操っているだけなのか。なにか教えられてない技があるのではないかと考えているのだ。
そうやって周りの生徒たちが頑張っている姿を観察しながら考えていると、火乃花が近寄って来た。