9-1-8.???
「ふむ。目醒めたと言っても、まだまだだ。これでは意味が無いな。そこの君、少しどいてくれるか?」
男に声を掛けられた白衣の人物は慌てて席を空ける。
その席…円筒を囲む機械の前…に座った男は、キーボードを叩き始めた。
カタカタ
カタカタカタカタ
不意に、キーボードを叩く動きが止まる。
男は顎に手を当て小さく呟く。
「ふむ。今までの実験結果のデータが必要だな。正しい方向に導いてやらねば。」
ウイィィン
ドアの開閉音。
そこから入って来たのは、スーツを着た男だ。入って来るなり、少し興奮した声で話し出す。
「おい、聞いたぞ。目醒めたらしいじゃないか。フッフッフ。私の協力がやっと実り始めたかな?で、どうなんだ?上手くいくのかな?」
円筒の前に座っていた男は、背中から聞こえた声に顔をしかめる。
だが、振り向いた顔は薄笑いを浮かべていた。
「これはこれは。こんな所に来るとは、よっぽどの用事でもあったのですか?」
スーツの男は髪を掻き上げると、笑い声を洩らす。
「ふっふっふ。遂に実験は第2段階に入るのだよ。今までの成果達に、次の段階に進む為の成果を出してもらう段階にな!」
「ふむ。そういう事ですか。それは楽しみですね。」
「期待してくれたまえ!では、失礼する。くれぐれも【其れ】は大事にしてくれよ。」
「はい、分かりました。」
スーツの男は満足そうに腕を組むと、部屋を出て行った。
「ふん。いい御身分だ。いつ、彼に後悔が訪れるのか楽しみだね。」
白衣の男は顔を機械のモニターに戻すと、再びキーボードを叩き始める。
部屋の中は【其れ】が目醒める前と同じ静寂に包まれていた。




