9-1-7.???
薄暗闇が支配する部屋。
部屋の壁一帯には、大小様々の機械が並んでいる。機械からはコードや管が伸び、不規則であるかの様に規則的にランプが点滅を繰り返している。
その部屋の中央に【其れ】はあった。
各機械から延びる管は全てそこに集約されている。
管が繋がる先。それは巨大な強化ガラスの円筒だ。円筒の周りにはキーボードが備え付けられた機械が4つ、囲む様に設置されている。それらの機械には技術者だろうか、科学者だろうか、白衣を着た男たちが座り、休む事なくキーボードを叩き続けている。
【其れ】は其処で産声を上げる。
「…………グル………。」
白衣の1人がモニターから顔を上げた。
「おい、今…声を出したぞ!?」
その科学者の声に、周りの白衣を着た人々にざわめきが伝播する。
「……ガ……ル……。」
機械の1つに繋がったヘッドホンに意識を注いでいた白衣の男は、その声を聞くと同時に驚きと喜びが混じった表情を浮かべた。
「間違いない!目を、目を醒ましかけてるぞ!」
その叫びに部屋の中のざわめきが1段と大きくなる。
「…煩いぞ。」
部屋の端に座っていた男の小さな呟き。一瞬の内にざわめきが静まり、部屋に響くのは機械の駆動音のみとなる。
コツコツコツコツ
静寂をもたらす呟きを発した男が、部屋の中央に歩み寄る。円筒の前まで来ると、人差し指で上から下へ強化ガラスをゆっくりと撫でる。
愛おしい恋人の髪を梳くかの様な手つき。
部屋にいる白衣の人物達は、その男の動きを注視する。




