9-1-5.魔法協会ギルド
門の中、その屋敷…城の敷地内は広大だった。外から見るよりも更に広い。
恐らく空間拡張の魔法が敷地内に掛けられているのだろう。
龍人は感心して周りを眺めながら城へと向かう。
門の外から眺めた時は、城は門を入って10m位の所にあったのだが、今は100m以上先に聳え立っている。
あたり一面は芝生に覆われ、池もある。のどかな風景の中を進み、城へと到着した龍人を出迎えたのは、巨大な扉だった。
扉の前に立つのと同時に、それはゆっくりと開く。
扉の内側には、人の良さそうなお婆ちゃんが立っていた。腰が曲がり杖をついているが、柔らかい表情、雰囲気を携えている。
「あ、こんにちは!ギルドの依頼で来た高嶺龍人です。」
「よく来たねぇ。私1人で住んでいるから、掃除が大変でねぇ。月に1回はギルドに頼んでいるんだよ。こっちにいらっしゃい」
「はい!」
元気良く返事をした龍人を眩しそうに、目を少し細めながら見ると、微笑み、家の中へと歩き出した。龍人もその後ろをついていく。
家の中は、外見に比べると幾らか質素な印象を受けた。豪華な造りで埋め尽くされている訳ではなかった。どちらかというと、飾らない豪華さと言った所か。
1階の奥の部屋へと進んで行くと、小さな小部屋に通された。
「ここが、私がいつも過ごしている部屋だよ。他の部屋に比べると小さいけど、これ位が1番落ち着けるのよねぇ。」
お婆ちゃんは話しながら何やらゴソゴソしている。
「あったあった。そこに座りなさい。」
「あ、はい。失礼します。」
龍人が指し示された椅子に腰掛けると、お婆ちゃんも反対側に座り、何やら紙を広げ始めた。
「これは…、この家の見取り図ですか?」
「そうよ。今居るのがここでね、掃除して欲しいのが、こことこことここと……こことこことここね。」
掃除をする場所の数に龍人は絶句する。
「えっと…これ、1日で全部っすか?」
「いいえ。これを1日で終わらせるのは、ギルドランクでB位の実力がないと無理だからねぇ。どれだけ時間が掛かっても大丈夫だからね。」
ほくほくと微笑みながら告げたお婆ちゃんの台詞に、龍人は引き攣った笑みを浮かべる事しか出来なかった。




