9-1-3.魔法協会ギルド
「あの男、何も話さずに推薦状を渡したのか。…そうだな、ラルフ=ローゼスのギルドランクが高いという事だけ言っておこう。個人情報は基本的には開示して無いからな。」
受付の男の意味深な台詞。ラルフがギルドに所属しているならば、ギルドランクが高いのは用意に想像できる。しかし、何故そこに含みを持たせるのか。その真意を図りかねる龍人と遼。
そんな2人の様子を眺めていた受付の男は問いかける。
「で、今日は何か依頼を受けるのか?」
「あ、えーっと、どうする遼?」
「んー…せっかくだし受ける?」
受付の男は台帳をパラパラとめくる。
「Eランクの依頼は今の時点で…28件だな。ほら。」
受付の男が指を鳴らすと、龍人達の目の前に紙の束が現れる。
「その中から好きなのを選べ。」
「ありがとうございます。…って、依頼ってこんなんばっかなんですか?」
龍人がめくった紙には、お使いとしか言えない様な依頼が並んでいた。
犬のお世話
買い物の荷物持ち
害虫駆除
子供のお守り
などなど。
「Eランクなんてそんなものだ。ギルドなんて、所詮は便利屋みたいなものだからな。」
龍人があからさまに嫌な顔をする。
「うへぇ。早くギルドランク上げなきゃな。」
「でも、結構時間かかるんじゃない?DランクってEランクの依頼を20件こなしたらですよね?」
遼の問いに、受付の男が頷く。
「ああ。そうだ。一般的にギルドらしいと思われている依頼はCランクからだから、更にDランクの依頼を40件する必要がある。」
龍人が更に面倒臭そうな顔をする。
「えー。ランクをすっ飛ばす方法はないんすか?」
「ない。」
「うへぇ。」
ひと言で断定された龍人は、面倒臭そうに頭をガシガシ掻く。
「いいじゃん。依頼をすれば報酬がもらえるんだから。そもそもその為のギルド加入じゃん。」
「そうなんだけどさぁ。やるならスリルがあった方がねぇ?」
「まぁいいや。俺はこの依頼を受けるね。」
取り合うのが面倒臭くなった遼は、さっさと依頼を受諾してしまう。
「あっ、ズリィ!」
龍人は慌てて依頼の紙をめくり、特に内容も見ずに受付の男に突き出す。
「俺はこれ!」
「ふむ。じゃあ、頑張る事だ。」
受付の男の無表情な返事と共に、依頼が受諾された。




