8-6-8.夏休み、ルーチェの場合
街魔通り沿いにある中華料理専門店『中華帝国』。その1室にルーチェ、龍人、遼、ラルフは座っていた。
「やべぇ、めっちゃ美味い!」
餃子を頬張った龍人が叫ぶ。
「なにこれ!?噛んだ瞬間にパリッとした皮の内側から、ジューシーな液体が溢れ出て来て、そこから香る香ばしい匂いが鼻腔を刺激する!」
「おい龍人。真面目な話してんだから、少しは静かにしろって。」
ラルフが冷たい声で責めるが、龍人はどこ吹く風だ。
「いやいや!喰ってから言ってくださいよ!はいっ!」
龍人は餃子を箸で掴むと、無理やりラルフの口へ突っ込んだ。
「てめへ!なにすん…うめえ!」
ニコニコとその様子を眺めるルーチェ。そして黙々と食べ続ける遼。
30分後、皆が満腹になり落ち着いたところで、再び会話が始まる。
「でよ、最近何者かに襲われる事件が増えてんだよ。」
「犯人は全然分からないんですか?」
遼の問いに、ラルフは困った様に眉を寄せる。
「それがよ、被害者は全員、相手が動物みたいな姿だったって言うんだよ。しかも、全員やられた属性魔法がバラバラなんだよなぁ。」
「複数犯じゃないすか?」
龍人からの尤もな指摘。
「まぁそう考えるのが妥当なんだけど、狙う場所の環境、時間帯、狙い方が複数犯にしては偏ってんだよな。」
話を聞いていたルーチェが、両手を添えて飲んでいたティーカップを静かに置くと、思いついたかの様に話し出す。
「そう言えば、お父様とお母様が大切な案件があるからと言って、朝早くから出掛けたらしいですわ。もしかしたら、その話に関係があるかも知れませんわね。」
「あ。」
と、声を上げたのは龍人。
「そういや、俺が入院してる間も急患がちょくちょく来てたよ。看護師が最近急患が多いってボヤいてたわ。」
全員が考え込む。
話を聞きながらお茶をすすっていた遼は、キョトンとした顔でひと言。
「捕まえればいいじゃん。」
ごもっとも。しかし…
「あのなぁ、それが出来りゃ苦労しないって。」
やれやれといった風にラルフは首を振る。
「や、だから、動物みたいな姿って事は、多分普通の魔法反応じゃないはずじゃん?だから、そこだけに絞って南区全体に探知結界を張れば良くない?」
「あのなぁ、遼。」
龍人が呆れた声を出す。
「南区がどんだけでかいと思ってんだよ。いつ起きるか分からない事件のために、そんな巨大な結界を張り続けたら、魔力がもたないよ。それに、怪しまれて犯行が起きなくなる可能性もあるって。」
「あ、そっか…。いい案だと思ったんだけどなぁ。」
「いや、待て。」
ラルフは何かに気づいたかのように考え込む。




