8-6-6.夏休み、ルーチェの場合
光の柱の向こうに見えたのは…
「なんだよ。遼かー。いつもやってるからって、病み上がりの病人に不意打ちってのはさ、エグくない?」
「え?病み上がりの癖に、いつもより反応が素早かったじゃん!」
「ま、治療中も体に支障がない範囲で魔力操作の練習してたからね。」
パチパチパチパチ
音のする方を見ると、ルーチェが嬉しそうに微笑みながら拍手をしていた。
「お2人とも凄いですわ。久々に不意打ちする遼くんと、それを受けて立つ龍人くんを見ましたけれど、見てて楽しかったですの。」
ルーチェの賞賛にイマイチ反応が出来ない2人。微妙な空気が漂い始める。
ルーチェがパンと手のひらを合わせた。
「そうですわ。折角だから、3人でお食事に行きませんか?」
「あ、いいねぇ!病院食ばっかだったから、とびっきり美味しいもん食べたい!」
「いやいや、お金無いんでしょ?」
すかさず遼がジト目で龍人にツッコム。
「それなら大丈夫ですわ。退院祝いで、私がご馳走しますの。」
「まじ!?サンキュー!」
思いっきりガッツポーズ。
「じゃ、行きましょうか。私オススメのお店があるんですの。」
「おう!」
「うん。」
「おーい!」
遠くから聞こえる声に3人が振り向くと、ラルフが片手を上げながら走り寄って来る。
「ふぅ。間に合った!」
「あら、ラルフ先生。ご飯が食べたかったですの?」
「そうなんだよ!腹が減り過ぎて遅れちまった。…って違うわ!」
ラルフの1人ツッコミ。面白いほどに場がしらける。
「待て。今のは忘れてくれ。」
3人は冷たい目でラルフを見つめる。




