330/994
8-6-4.夏休み、ルーチェの場合
「あら!ルーチェじゃない!久しぶりね!」
「ふふ。お久しぶりですの。お元気でしたか?」
「もちろんよー!ちょっと年はとっちゃったけど、まだまだ現役よ。あの頃が懐かしいわね。」
「本当ですわ。ところで、中央区に行きたいのです。」
受付のお姉さんは片手を頬に添えると、フゥと息を吐く。ルーチェは小さい頃から何かやりたい事があると、他の事を後回しにする癖があったのだ。今回の場合は、「受付のお姉さんとの会話」である。
「その感じは相変わらずね。いいわ。通行許可証は?って聞く必要も無いんだけど、体裁上出してもらうわね。」
「はいですわ。」
ルーチェは通行許可証を取り出すと、受付のお姉さんに見せる。
「はい。ありがとね。じゃ、行ってらっしゃい。」
「言ってきますわ。」
ルーチェはニコニコと笑いながら魔法陣の中に消えて行った。
転送の光に包まれ、視界が白になり、次に色彩を取り戻し始めると、中央区のゴチャゴチャとした風景が目の前に広がっていた。
(ではでは、久々に買い歩きでもしましょうか。)
中央区の雑踏の中にルーチェは消えて行ったのだった。




