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8-6-2.夏休み、ルーチェの場合
ルーチェは家の門を出ると、後ろを振り返る。そこには10人を越える召使いが整然と整列していた。
「では、行ってきますわね。」
「「行ってらっしゃいませ」」
キチンと角度の揃ったお辞儀で見送る召使い達。
その後ろから、1人の老人が現れた。
「ルーチェお嬢様。こちらがお花で御座います。ご要望通り、出来るだけ豪華に致しました。」
老人の手元には、人1人分はあろうかという巨大な花束が抱えられていた。
「ありがとうですの。」
ルーチェは花束を受け取る。
その予想以上の重さに少しよろめくが、直ぐに無詠唱魔法で力の補強をする。
抱えた花がすぐ顔の前に来ると、生花の香りが鼻をくすぐった。
「いい匂いですわ。喜んでもらえればいいのですけれど。」
ふふっと笑みを零すと、ルーチェはのんびりと歩き出した。
少し歩くだけで、汗が滲み出てくる。
(昨日も暑かったけど、今日も暑いですわね。こんなに暑いのでは、外を出歩きたく無くなってしまいますわ。)
少し歩くと、目的地の病院が見えてきた。




