8-6-1.夏休み、ルーチェの場合
カァーカァー!カァーカァー!
「あら、朝からカラスが煩いですわね。普通は小鳥の囀りだとおもうのですが。」
鏡の前から窓辺へ移動し、外を眺める。
そのタイミングを見計らったかのように部屋のドアがノックされる。
ぱっと振り向くのに合わせて金髪のショートカットが揺れる。この屋敷に住むお嬢様、ルーチェ=ブラウニーだ。
「どうぞ。入って下さいな。」
ドアがスッと開くと、そこに居たのは召使いだった。
「お嬢様、朝食の準備が整いました。」
「分かりましたわ。直ぐに向かいますの。あと、お願いしていた物は用意できましたか?」
「はい。朝食後、お出掛けになられる際にお渡しさせて頂きます。」
「ありがとうですの。」
召使いはルーチェの言葉に深々とお辞儀をするとドアを閉めて立ち去った。
ルーチェは窓の外を眺めるが、そこからはカラスの姿を見る事は出来なかった。鳴き声もいつの間にか止んでいる。
(今日の朝食は何でしょうか。)
ルーチェは窓から視線を外すと、ダイニングルームへと向かう。
「おはようございますですの。」
そう言ってドアを開けたが、部屋の中には誰も居なかった。
(あら、誰も居ませんわね。)
少し寂しい気持ちを感じながらも、ルーチェは席に座る。
少しすると召使いが朝食を運んできてくれた。
「ありがとうですの。お父様とお母様はもう出かけたのですか?」
「はい。ご主人様と奥様は、大切な事案があるとの事で、朝早くに家を出られております。」
「ありがとうですの。じゃあ、朝ご飯頂きますわ。」
ルーチェは朝食を食べ始めた。
因みに、本日の献立。
クロワッサン
ミルクパン
目玉焼き
サラダ
ベーコン
ボルシチ
朝から豪華である。
そして、ルーチェは綺麗に完食するのだった。




