8-5-8.夏休み、遼の場合
「問題なんてあるんですか?」
レイラが頭を横に傾げて尋ねる。
「んー。まぁ、な。まず魔具の製作者が分からない事。そんで、魔具の名前が分からない事だ。小さな損傷ならいいんだが、大きな損傷の場合、製作者以外では直せない事があるからな。あとは名前だが、上級魔法の中には魔具の名前が必要な魔法があるんだよ。商品としては、いまいちアフターケアとかに欠けるんだ。」
「大丈夫です!私、すっごい大切に使いますから!」
レイラの満面の笑みに、シェフズがやや暴走する。
「ほんっとに可愛い娘っ子だなぁおい!」
レイラの頭に手を載せると、グワシャグワシャと頭を撫でる…擦る。
あまりの勢いに慌てて遼が制止する。
「シェフズさん!レイラが目を回してますって!」
「おっと!」
と、シェフズが手を離した時は、既に後の祭りだった。
レイラの頭の周りにピヨピヨと声を出すヒヨコが数羽羽ばたいている。
「ふえ。」
レイラはパタンと尻もちをつく。
「おっと。やりすぎたな。…その内、元気になるだろ!よし、仕事仕事!」
「薄情な…。」
遼の呟きを聞こえない事にしたシェフズは、店内の別の場所に歩いて行ってしまった。




