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Colony  作者: Scherz
第三章 魔法街 光の裏側
318/994

8-4-4.夏休み、スイの場合

スイの背中を嫌な汗が流れる。このままでは、バルクに「恋に悩む男」という印象を持たれてしまう可能性がある。

そんな印象、学院におけるスイの行動とかけ離れすぎている。そんなイメージを持たれるのは、心外の一言に尽きる。


どうやって弁明するか。スイは全力で頭を回転させるが、上手い言葉が出てこない。

そうしている間にも事態は勝手に進んでいく。


「こーゆー本を頼むってことは、スイって恋愛に興味あんのか?」


バルクから発せられる素朴な疑問。

しかし、そんな疑問ですらスイを焦らせるのには十分だった。


「待てバルク。お主は誤解している。」


「ん?恥ずかしがるなって!誰でも興味はあんだから!」


バルクはニコニコの笑みを浮かべる。


「いや、そもそもだ、これを頼んだのは我では無い。これを見ろ。」


バルクは何としても誤解を解くために、ラルフからの手紙を見せる。


その手紙をマジマジと見つめるバルク。


(これで変な誤解はされないはずだ。)


それはスイの希望的観測に過ぎなかった。スイよりもラルフと関わり、いじめられてきたバルクは、ラルフの勘の良さを身に染みる程分かっていたのだ。


「なるほどなー。ってことは、ラルフはお前が恋に悩んでるって思ってるんだろ?実はお前自身気づいてないだけじゃねぇの?」


バルクの指摘に、スイは一瞬だが硬直する。その変化を近接戦闘を得意とするバルクが見逃すはずも無かった。


「お!図星じゃねぇか?誰だよ誰だよ?」


「おい、人の話を…。」


「あ、もしかしてさ、上位クラスのあの娘か?確かにかわいい…。」


「おい。」


スイから冷たく低い声が発せられる。その目は冷たい怒りに燃えていた。


「あ、怒っちゃった?」


ははは。と乾いた笑い声をあげるバルク。


スイはバルクに背を向けて、壁に向かって歩く。その先の壁には3本の日本刀がかけられていた。

その1本を掴むと、シィィィという音を立てながら刀身を引き抜いた。


「ちょい待て!ちょい!」


「問答無用。」


スイが刀の切っ先をバルクに向ける。


「うお!悪かった!」


バルクは大声で謝ると、スイの自宅から全力で逃げ出した。


スイは家の中でため息をつくと、刀を壁に戻す。


そして、テーブルに置かれた本との睨めっこを始めた。


果たしてスイは読むのだろうか?


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