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Colony  作者: Scherz
第三章 魔法街 光の裏側
317/994

8-4-3.夏休み、スイの場合



家の中に入れたバルクは、スイの予想以上の騒々しさを発揮した。


家の中を勝手に歩き回り、珍しい物を見つける度に、これは何かと質問を連発してくる。


襖。鹿威し。囲炉裏。畳。等々…。


巨大な餓鬼んちょが家に迷い込んだかのようだ。

日本家屋クルーズが1通り落ち着くと、バルクは鹿威しの前にしゃがみ込み、眺め始めた。どうやら、かなり気に入ったらしい。


一旦落ち着き、バルクから解放された所で、スイは小包を開けることにした。

テーブルの上に置いたそれを眺める。

小包のラベルには、宛先は書かれているが、宛名や差出人の表記は無かった。

どう考えても怪しいと思うのが普通である。


最大限の警戒をしながら、慎重に小包を開けていく。開けた瞬間にドカンなんて結果も待っているかも知れない。箱に貼りつくテープをゆっくり剥がす。そして、蓋をそっと、そっと持ち上げた。

中から出てきたのは、スイが巡らせていた様々な予想の斜め上を行く物だった。


小包の中には数冊の本。


大人の恋愛

女性の心の解剖学

モテる男の心理術

etc....


そして、小包の1番下から出てきた紙には、こんなメッセージが書かれていた。


《親愛なるバルクへ。夏休みだな。元気か?俺の予想だが、お前は今悩んでるとみた!これでも読んで勉強するんだ!ちゃお☆》


手紙の右下には署名がしてあった。


《偉大なる教師、ラルフ=ローゼス》


(あの男…!)


スイの中で怒りが渦巻く。その行き場の無い感情に耐えていると、バルクがいきなり横に現れた。


「へー。小包の中身は本だったのか。スイらしいな。タイトルがかなり気になるけど。」


そこまで言うと、バルクはスイの顔を見て悪い笑みを浮かべる。



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