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Colony  作者: Scherz
第三章 魔法街 光の裏側
315/994

8-4-1.夏休み、スイの場合



カコーン。カタン。チョロチョロチョロ。カコーン。カタン。チョロチョロチョロ。カコーン。


鹿威しの心地よい音が響く。

魔法街南区東側住宅地域北端(名称が長い!)に位置する日本家屋。


襖が開かれ、夏の暑い熱気と共に、生暖かい空気が家の中を通り過ぎて行く。その風に吹かれ、夏の風物詩でもある風鈴がチリンチリンと響く。


街魔通りの喧騒などから隔絶された空間。


そんな家の和室。畳が敷かれた部屋で、1人の青年が書道をしていた。服装は黒を基調とした着流し。所々に青いラインが刺繍されている。

筆を滑らかに滑らせ、トメ、ハネを最後まで神経を注いで書き終えると、ゆっくりと顔を上げた。

後ろで一本に纏めた黒髪が動きに合わせて流れる。


(落ち着こうとして書道を始めたのに、我はなんでこの文字を書いているんだ。むぅ。)


スイが眺める文字。それは和紙に書かれた1文字だ。



この1文字である。スイは夏休みに入ってから、愛とは何か。という、中高学生が放課後にファミレスで話しそうな内容を、1人で議論し続けていた。


何故、そんなテーマについてスイが考えているのか。そればっかりはスイにしか分からない。

ただ、入学してから現在に至るどこかで、そのキッカケとなる何かが起きていたのは間違いがないだろう。


スイは視線を庭へと向ける。庭の中央には1箇所、芝生が無い場所がある。スイが毎朝の日課として、居合の練習をする場所だ。長年その場所で練習を続けたために、芝生が生えなくなってしまった。


ゆっくりと息を吸い、薄く長く吐き出すと、書道セットを片付けを始める。


部屋の端に動かしていたテーブルを部屋の中央に戻し、急須で緑茶を淹れる。

湯のみに淡い緑が広がる。その緑を眺めているだけで、少しではあるが心が落ち着いて行く。


丁寧に、ゆっくりと味わう。仄かなお茶の甘みが口の中に広がり、後から渋みが追いかけてくる。緑茶は、その渋みでさえも心地よい。


湯のみを静かにテーブルに置くと、家のチャイムが鳴らされた。



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