8-3-2.夏休み、バルクの場合
バルクは街魔通りを走りまくる。
街魔通りは商店が多いため、その日の配達の半分以上が集中しているのだ。
1時間程かけて街魔通り関連の荷物を届け終わったバルクは、とある店の前で立ち止まった。
(この店はあんまいい思い出がないんだよな。…まぁ、しょうがないか!)
バルクは元気良く挨拶をしながら店に入って行く。
「こんちわっす!荷物を届けにきました!」
「は~い!」
店の中から聞こえてきたのは、可愛らしい女性の声だった。
(なに?店を間違ったか?あの親父しかいないはずなんだが…。)
バルクは予想外の展開にフリーズ。
店の奥から出て来たのは、レイラだった。
「レイラ!なんでお前がこの店から出てくる!」
「あ、バルク君。夏休みの間、この店で働かせてもらうことになったんだ。」
「お、おう。そうなのか。」
すると、奥から豪快な声が響く。
「おう!いつぞやの少年じゃないか!あのグローブは大事にしてるか?」
シェフズだ。
そう、バルクが入るのを躊躇ったのは「魔法の台所」である。
淡い恋心の記憶。なんて言ってしまえば青春の1ページであるが、バルクとしてはあまり思い出したくない記憶でもある。
「あ、あぁ。大事にしてるぜ!全然使いこなせてないけどな。」
「はっはっは!まぁ、魔具なんてそんな簡単に使いこなせるもんじゃないからな!で、荷物はなんだ?」
「あ、これっす!」
荷物の存在を完全に忘れていたバルクは、慌てて格納用魔具から荷物を取り出す。
少し大きめの小箱だ。
「ん?あぁこれか。ありがとな!」
シェフズは箱の中身を確認すると、二カッと笑顔を浮かべる。
「中に何が入ってるんですか?」
レイラが箱の中を覗こうとするが、パタンと蓋を閉じられてしまう。
「ん?そりゃぁ、教えられないな。もう少し仕事が出来る様になったら教えてやるさ!じゃ、店番よろしくな!」
シェフズは箱を脇に抱えると、豪快に笑いながら店の奥へ行ってしまった。




