2-7-16.授業 基礎魔法
ラルフの後について龍人が次の授業場所へと着くと、先に1つ目の授業内容をクリアしていたクラスメイトが全員座り込んでいた。顔には疲労の色が濃く見て取れる。
「おいおい、お前らもう魔力の限界か?」
ラルフが呆れ顔で声を掛けると、火乃花がムッとした顔でラルフを睨み付ける。
「先生!遠すぎます!しかも2本連続で真ん中とか厳しすぎます!」
「なーに言ってんだ。こんなの朝飯前に出来ないと話にならないぞ?そもそもな、お前らは遠くまで魔力を繋げるからって魔力を使いすぎなんだよ。デリケートにうす~くなが~く伸ばすんだ。大きいのがいいってわけじゃない。」
(なんだ?どんな授業なんだし。)
「ラルフ先生。ここでは何をすればいいんですか?」
取り敢えず授業内容を聞かなければ何もわからないと質問した龍人を見ると、ラルフはまたニヤリと笑った。
「まぁ、なんだ簡単に言えば的当てだな。条件は一つ。矢が的に当たるまで魔力を矢に繋げておく事。魔力が通ってないと、矢が刺さらない様になってる訳だ。そして、2本連続で的の中央に当てればクリアだ。まぁ見てろ。」
ラルフは近くにある矢を2本拾うと、赤い線が引いてある前まで進んだ。そして、無造作に1本の矢を放り投げる。矢は宙高く飛び重力に引かれて落下する。この軌道では的に当たる可能性は皆無。地面に落ちる事必至である。
だが、地面に落ちる直前で矢の向きがいきなり変る。まるで矢自体に意思が宿ったかの様に飛び回り、宙返り、蛇行を繰り返し的の中央へと吸い込まれていった。無駄な軌道がかなりあった気もするが、それでも矢は的の中央に突き刺さっており、今回のルールから全く外れていない。
更にラルフはもう一本の矢をオーバースローで投げる。こちらの矢は1本目とは違って一直線に進み、的に刺さっていた矢の矢筈の中心を捉えて半分に割っていき、前の矢を破壊しながら的の中央へと突き刺さった。
生徒達が苦戦していた矢の操作を、楽々とやり遂げて見せたラルフがニヤニヤしながら振り返る。
「簡単だろ?1本目程クネクネさせなくてもいいけどな。せめて、2本目位は出来て欲しいな。これが出来ないと、基礎魔法の3つ目は確実に出来ないから、踏ん張れ!俺は飽きたから本を読む。」
ラルフは懐から本を取り出した。否、雑誌である。しかも、ちらりと見えた内容的にその雑誌は男が好きそうな…
「先生!なんで読むのがエロ本なんですか!?」
雑誌の表紙を見た火乃花が叫ぶ。いや、ツッコミか。
「ん?読書は大事だろ!」
辺りに居る生徒達からはため息が漏れる。ラルフの教師としての威厳が皆無なのは間違いない。
一先ず龍人は、試しに矢を投げてみる事にした。