8-2-1.夏休み、レイラの場合
火乃花と別れ、教師校舎の職員室に向かうレイラ。
ドアをノックし、中に入る。
「失礼します。」
夏休みという事もあり、ほとんどの教師がいなかった。その中で、何やら表紙がアダルトな女性っぽい雑誌を読む男が、レイラに手を振った。
「おーいレイラ!」
「あ、ラルフ先生。」
レイラはちょこちょことラルフの近くまで歩いて行く。
ラルフはその雑誌を特に隠す事なく机の上に置く。
「書類は持ってきたか?」
「はい。これでお願いします。」
レイラは鞄から書類を取り出すと、ラルフに手渡した。
「うん。…よし!ちゃんと全部書いてあるな。後は成績次第だけど、まぁレイラなら大丈夫だろ。」
「はい!よろしくお願いします。」
「おう。」
ラルフは書類を机の上に置くと、何かを思い出しようだ。
「そうそう。レイラが使ってる魔具って、ふつーのらしいな。ちゃんとした魔具買わないのか?」
レイラはきょとんとした後に、困った様な笑顔を浮かべた。
「買いたいなって前から思ってはいるんですが、お金が無くて手が出ないんです。奨学金を貰ってるくらいですし。」
「そうか。今使ってるのは、普通の杖だっけ?それであんだけの魔法が使えるんだから、レイラに合った魔具が見つかれば、もっと凄くなると思うんだけどな。ま、少しずつでも金を貯めておけよ。いつか必要になるかもだしな!じゃ、俺は真面目に読書をしなきゃいけないから。気をつけて帰るんだぞ。」
ラルフは先ほどまで読んでいた雑誌を取り出す。雑誌の時点で読書をというのがおかしいのだが、勿論その中身も読書というにはあまりにも遠すぎる内容で。
しかし、そういった話題に慣れていないレイラは、ラルフに突っ込む事もできず。でも、ちょっと雑誌の中身が気になったりもして。
でも、恥ずかしいので中身は見ずに、チョコンとラルフに頭を下げる。
「はい、失礼します。」
チョコチョコと職員室を出て行くレイラの後ろ姿を、ラルフは雑誌越しに見ていた。
(しかしだ、レイラが杖を使ってるとこは見たこと無いからなぁ。最初は何かアクセサリー系の魔具だと思ってたが…。何も無いといいんだが。)
ラルフも一応は教師なので、レイラの特殊性には勿論気づいており、それが周りに露見することで起こりうる事も、ある程度は想像がついている。
(ほんと、今年の上位クラスは普通じゃない奴が多すぎるな。まぁ、ルフト=レーレよりは大人しいけどな。)
ルフト=レーレが入学した当初を思い出したラルフは、苦笑いを浮かべる。そして、再び雑誌に載っている写真を堪能し始めた。




