8-1-6.夏休み、火乃花の場合
「龍人君この前はごめん!助けてくれてありがとう!」
深々と頭を下げる火乃花。
対する龍人はというと…
キョトン
としていた。
「え?なに言ってんの?助けてくれたのは火乃花っしょ?」
「…え?だって龍人君が私を守って怪我して…。」
「…え?火乃花が来なかったら…。ん?」
暫しの沈黙。
「ぷっ。」
「ふふ。」
自然と2人から笑みが零れ出す。次第に笑みは大きくなり、大きな笑い声と変わる。
ひとしきり笑うと、火乃花は涙を拭いながら龍人を見る。
「お互いに同じような事を考えてたのね。」
龍人も涙を軽く拭う。
「ホントだな。ちっと負い目に感じてたから、スッキリしたよ。」
「私もよ。」
火乃花はそう告げると、安堵の笑みを浮かべる。
その笑顔に龍人が思わず見つめてしまう程に、素敵な笑顔だった。
「怪我の方はどうなの?」
火乃花に見とれていた龍人は、ハッとする。
「あ、あぁ。なんとなんと、明日に退院だよ。」
「え?結構治るの早いのね。あんな傷だったのに…。」
「俺も夏休み中はずっと病院かなって思ったんだけど、さすが病院だよ。治療関係の魔法使いのスペシャリストが集まってるわ。」
なるほど。と火乃花は感心する。
確かに魔法を使えるこの世界では、回復魔法を使う事が出来る人がいる限り、病院の存在意義はあまり無いように思える。
しかし、それでも存在しているというだけの価値があるという事だ。




